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 思った通りビーフジャーキーは弟逹に好評であった。
 本来なら山に居たいだろうに、私のために城に居てくれる弟逹。嬉しそうな笑顔を見ると、胸がほっとする。

「私は、ちょっと出てくるがお前逹はこの部屋にいるんだぞ。レイスが来てもついていってはいけないからな」
「はい」

 声を揃える弟逹に、うむと私も頷き部屋を出る。
 向かうのは長い廊下を数分歩いた先にある部屋だ。
 細かい刺繍が施された美しい扉があり、私は二回頭でノックをする。

「キンラか! 入れ!」
「うむ」

 出迎えてくれたのは黒き魔獣、ミースだ。


*****



「そ、それでそなたの弟逹はもう大丈夫なのか?」
「うむ。皆、元気になった」

 ミースは、あれからというものしばしば私を待ち伏せしては弟の病状を聞いてきた。
 最初は私もあまり良い感情を抱いていなかったが、話をするうちにミースもレイスに騙された被害者なのだということがよくわかったのだ。

「レイスに頼まれたとはいえ、お前逹一家に我は酷いことをした…」
「なんて頼まれたのだ?」
「レイスに教えられたセリフをお前に言えと言われたり、お前の弟逹を痛めつければ、ビーフジャーキーを半年分くれると言われたのだ」

 だからつい、とミースは耳を垂らして言う。
 この魔獣は美しく強い割にはおつむが弱いのだろうか……

「お詫びといってはなんだが、我のビーフジャーキーを半分やろう。嬉しいだろう?」
「それは弟逹が喜ぶな。頂こう」

 初めて会った時の冷酷な印象とは違い、ミースはコロコロしっぽを振り表情豊かだった。

「それで、その、我を許してくれるだろうか?」
「………傷つけられたのは、弟逹だ。弟逹に聞けば良い」
「会わせてくれるのか?」
「……考えておこう」

 しゅん、と元気をなくすミース。だが、それとこれとは話が別なのだ。

「まぁいい。毛繕いでもしようではないか」
「おぉ! よし、我が先にしてやろう」

 ミースはすぐに元気を取り戻した。


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