5

 レイスを間に挟みながら、私と黒き魔獣は睨み合う。

「レイス、これが貴様のお気に入りとはな。ゲテモノ趣味もいいとこだ」

 黒き魔獣は鼻で笑うとくるりと身をひるがえし去って行った。
 私が後を追おうとするとレイスに手で制された。それでも追おうとするが、レイスは魔法を使ったのか体は動かない。
 黒き魔獣が見えなくなると、体は動くようになり、レイスはパッと私の方へ向き直った。

「キンラ、大丈夫? 怪我して──」
「うるさい!」

 ──レイスの言葉を遮り、私は低く唸った。

「よくも邪魔をしたな!」
「だってキンラ、あいつは──ミースは強いからキンラが危ないだろうと」
「やつは私を侮辱したのだぞ! 許せん!」

 レイスは情けない顔をして狼狽える。いつものように頭に手を伸ばしてきたので、私は前足でパッと弾いてやった。

「触るな! やつは無礼者だ! 無礼者にはきちんと罰を下すべきだ!」
「うんうん、もちろんだよキンラ。ミースは何をしたの?」

 私がそう言うとレイスは頷いて尋ねた。
 私は余り言いたくなくて、顔を地面に向けた。

「ねぇ、キンラどうしたのさ?」
「あ、あやつは私の毛並みと魔力を大したことないと…」

 あんな素晴らしい毛並みと側にいるだけで感じる上等な魔力の持ち主に馬鹿にされ、私は内心傷付いていた。
 故郷の山に住む魔獣の中では私が一番の美しさと強さを持っていたし、この城に来てからもあんなに美しい魔獣には会ったことがなかったのだ。だから私は自分が一番だと思っていたのだ。
 レイスはあの魔獣を知っていたようだから、劣る私の事を笑うかもしれない。

「キンラ、そんなことない! 君はとっても美しいよ!」

 だが、レイスはそう言った。

「君の綺麗な金髪の毛並みは太陽の下でキラキラと輝くし、魔力だって暖かくて側にいると心地良い! ミースだってまぁ毛並みは綺麗だけど、君なんかよりよっぽどヘボさ! あいつは性格は悪いし、魔力だって冷たくて嫌な感じなんだ。キンラのほうが素敵だよ!」

 レイスは目をカッと開き息つく暇もなく喋る。
 あまりにレイスが私を誉めるので私はなんだか恥ずかしくなった。

「そ、そうか?」
「うん! 絶対ね! でもあいつは戦いに関して強すぎるから、やっぱり戦うのはやめてね」
「………考えておこう」

 それとこれとは話が別だが、頷かないてきっとレイスが煩いので納得するふりをした。

「さぁ、部屋に戻ろうか」
「あぁ…」

 レイスが私の頭を撫でようと手を伸ばした。
 許したわけではないが、今度は避けなかった。



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