素敵な魔法2
アンモはトレイにティーセットを乗せて、ユーシスの座るソファーの前にある机へ乗せる。
「君はお茶が好きだと聞いたから良いやつを用意させてもらったよ」
「おぉ、それは楽しみです」
ユーシスは期待して、アンモに笑いかけた。
アンモは慣れた手つきで茶を淹れ始めた。
「はい、どうぞ」
「わぁ良い薫り」
差し出されたティーカップをユーシスは手に取りお茶の薫りを嗅いだ。そして一口。味わうようにして飲む。
「美味しい!」
「そう、良かった。ホッとしたよ。あ、君にもらったお菓子も出そうかな」
アンモは思いだしたようにキッチンへと戻り、ユーシスの手土産を持ってきた。
そして2人でお菓子を摘まむ。美味しいお茶とお菓子に2人の会話は弾んだ。
「それで、面白い本というのはこれなんだがね」
「薬草学ですか」
「うん、君興味あるだろう?」
アンモが差し出した本にユーシスは手を伸ばした。
と、突然ガクリと全身から力が抜け痺れ始めた。
「あ、せんぱ…体が…」
ユーシスは椅子から崩れ落ち、縺れる舌でアンモに助けを求めた。
アンモはユーシスを抱えるとベッドに下ろした。
「大丈夫かい?」
「痺れて…動けません」
「そう…」
ユーシスがそう言うとアンモはベッドに腰かけた。
そしてユーシスを見るとにっこりと笑顔を浮かべる。
「あの本はね、面白い痺れ薬について書かれているんだよ。君の紅茶に入れてみたんだけど中々効かないからダメかと思ったけど……」
──さらりとアンモの手がユーシスの髪を撫でた。
「──良く効いたみたいだね?」
アンモが今、何を言ったのか。それを理解したユーシスは今自分が危険な状況にあることに気付いた。
「あ、あ、な、何をするつもり」
「んー、んー、大丈夫。痛いことなんてなぁんにもするつもりはないよ」
そしてゆっくりとアンモがユーシスに覆い被さってくる。ユーシスより遥かに大きい体がユーシスの体に影を作った。
「気持ち良いことをするだけだから」
するりとアンモの手がユーシスのシャツの中に入ってきた。
ユーシスの首筋にキスを落としながら、熱い息を吐く。
「い、いや……やめて!」
「ずっとこうしたかった」
アンモの手がユーシスの腹、胸を撫でていく。
唇がユーシスの首、鎖骨に赤い跡を残していく。
ユーシスは恐怖と、信頼していたアンモの裏切りに涙が零れた。 いやだ、いやだ、いやだ! ユーシスは泣き叫んだ。
「やめて! いやだぁぁぁ!」
「ふふ、かわいいね」
何もできずただ泣くユーシスをアンモは楽しそうになぶる。
が、そこへ部屋の呼び鈴が訪問を告げた。
アンモは手を止め、後ろを見た。
「誰だろうね」
そういってまたユーシスへと向き直った。
ユーシスはここぞとばかりに叫んだ。誰かは知らないが気付いて、そう願いを込めて力いっぱい叫んだ。
が、すぐにアンモに口を塞がれた。
「う、うぅ、うあうぅ!」
「しー、静かにね」
アンモは一瞬でもユーシスが大声で叫んだことに焦っているようだった。声が漏れているか不安なようだった。
そして呼び鈴がもう一度鳴った。
ユーシスは必死で叫んだ。押さえきれない声がアンモの手から漏れる。
「やめろ!」
アンモがユーシスの腹を殴った。ユーシスは息がつまり、叫ぶのをやめた。
アンモがほっと息をついた。
しかしその瞬間──
「ユーシス!」
──部屋の扉が開く音がした。
そしてユーシスの元へやってきたのは、息を切らしたニリアだった。
ニリアはユーシスの状況を見ると目をつり上がらせアンモに殴りかかった。
アンモをベッドから引きずり下ろし、跨がって拳を降り下ろす。ユーシスは泣きながら止めた。
「ニリア、ニリア、やめて」
「……ユーシス」
ニリアはユーシスの元へ来るとユーシスを抱き締めた。
「ユーシス帰ろう、さぁ早く」
「うん、うん」
ニリアはユーシスを抱え上げると部屋を出た。
******
後日、アンモは風紀による審査で罪を認め退学処分となった。
end
部屋を出た2人は風紀に行って通報しました。風紀は証拠を確認した上でアンモを拘束、審査して学園側に報告、退学処分となりました。
ユーシスのトラウマでしたー
次は大好きマーチ!の小話です。
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