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 その日俺は珍しく浮かれていた。昇進が決まり新しいプロジェクトをまかされて、最高の気分だった。いつもより早く会社を上がり、スーパーでいつもは買わない高いワインを買って家に帰ったのだ。

「エディ、ただいま!」

 扉を開けて同棲中の恋人に声をかけた。いつもならすぐお帰り、と声がかかるはずだった。

「おい、エディいないのか? 良い報告があるんだ」

 部屋の電気はついていたのでエディが家にいることは分かってた。だからきっとシャワーでも浴びてるんだろうと、俺はエディを気にせずスーツから着替えるために寝室のドアを開けた。
 開けてびっくり。ベッドには真っ裸のエディと見たこともない男が寝ていた。俺は二人にそこで何をしていたか気付くと、頭にカーッと血が昇って思わず怒鳴っていた。

「おいエディ! 起きろてめぇ!」
「ん……え…あ!」

 アホ面晒しているエディの顔をひっぱたき無理やり起こすと、やつの顔はみるみるうちに真っ青になっていった。

「どういうつもりだ! 俺のいない間何してたんだお前は!」
「に、ニコラス、あ、こ、こ、こ、れは、ちちちが!」
「何が違うんだよ!」

 慌てるやつのそばには使用済みコンドームが置いてあったし、いまだエディの隣でのんきに寝てる男の体には沢山のキスマークがついていた。

「最低だよお前は! 全く!」
「あ、や、ニコラス、その、彼は」
「早くその間抜けをどっかにやってくれ!」

 俺の言葉にやっとエディは男を起こした。ジョーイ起きて、とエディが言ってたから男はジョーイというのだろう。ジョーイは起きてもやっぱり間抜けで「なあに? まだ寝たいんだけど…」とか言っていた。

「おい、さっさと服着て出ていきな!」
「え……、あ、やだ! エディ、帰ってこないって言ったじゃないか!」

 俺に怒鳴られてやっと事態に気付いたらしいジョーイ坊やは慌てて服を着て出ていった。

「に、に、ニコラス、話しをしよう」
「お前に話しなんてあるか! いいか、明後日までにはこの家から出てけ!」
「ニコラス!」

 いまだ服を着ず間抜けなエディに俺は出ていってもらう事にした。元は俺が住んでいた家だ。

「今日はもう帰らない!」

 そう叫んで俺は寝室から出ると、家から飛び出した。



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