2
「実は今日ちょっとしたミスをしちゃったんです」
俯いてボソッとユーシスは告白した。アイーヌはそっとユーシスの隣に座った。
「私、馬鹿みたいなミスして、それに私が慌てて気付いた時にはもう既にソモルとアート先輩が先に直しておいて下さったんです。私……そしたら急になんか自分がみっともなく感じて…、生徒会長という立派な役職についておきながら自分はそれに見合う仕事をしているのかって…」
「会長君…」
「普段はこんな甘ったれたこと考えないんですけど、今日はなんか変にネガティブに考えちゃって…」
喋りながらさっきよりもさらに俯くユーシス。アイーヌはそんなユーシスの肩をガッと掴む。
「あ、アイーヌ先輩?」
「会長君、僕に抱きついて」
「え、あ、はい!」
「いくよ!」
戸惑いつつもユーシスはアイーヌにひしと抱きついた。アイーヌはユーシスの腰を掴むとタッと地面を蹴った。
「わぁっ」
その瞬間、ユーシスの体はふわっと宙に舞った。
あっという間に2人はテラスから離れ高く舞い上がる。
ユーシスはアイーヌを抱き締める手に思わずギュッと力が入った。
「び、っくり、しました」
「ふふふ、周りを見てみなよ。綺麗だよ」
胸に抱きついているため上目遣いに見てくるユーシスの頭を撫でながらアイーヌは寮の名物でもある大木のてっぺんに腰かけた。
ユーシスもそっとアイーヌから手を離し木に座った。
「あ……凄い…」
ユーシスは目の前に広がる夜空の星に目を奪われた。見渡す限りの小さな宝石が夜空でキラキラと光っているのである。
「さ、お菓子でもどうぞ」
「あ、また……どんな魔法を使ってるんですか?」
「なーいしょ! ほら、あれは星座だよ」
魔法でお菓子を出してしまうアイーヌを不思議に思いつつも、ユーシスはすぐに美しい夜空の虜になった。
「なんて綺麗なんでしょう」
「みんな意外と知らないんだよね此処から見える空が綺麗ってこと」
ユーシスはそっと頭をアイーヌの肩へ傾けた。アイーヌが自分を慰めようと連れてきてくれたのが分かって嬉しく思ったのだ。アイーヌもユーシスの肩へ手を回し自分の肩へとユーシスの頭を押し付けた。
「………ありがとうございます」
星空へか慰めへかユーシスは言わなかったが、アイーヌはにっこりと微笑んだ。
「また、いつでも連れてきてあげるよ」
チュ、とアイーヌはユーシスの頬へ親愛のキスをした。ユーシスはしばらくそうしてアイーヌと共に夜を過ごした。
end
[*prev] [next#]
[back]
[しおりを挟む]