一万ヒット記念10

 抱き合うユーシスとニリアは己の背後に迫るミトの存在に気付かなかった。

「てりゃあ!」

 ミトは二人に拘束の魔法をかけ、縛り上げる。ミトの口元はニヤつきただならぬ雰囲気が漂っている。二人は悪寒を感じた。

「ぬふふふ、ユーシス様にも女王様の素質があるとは知りませんでした」
「こ、これをほどけ!」
「嫌ですぅ。あぁ…涙目のニリア様可愛いぃ。これから僕が二人とも可愛がってあげますからね?」

 ミトは再び魔法を唱えようと杖を持ち、集中し始める。

「アブラカタブラ……」

 ニリアはミトがとんでもない変態で、捕まったらとんでもない目に合うと分かっているので、どうにか魔法を食い止めようと試行錯誤する。

(えぇい!…どうにでもなれ!)

 ニリアが呪文を唱えるとトイレは爆発し、学園中に爆音が響いた。


********


「ケホッ! ユーシスだいじょ…ぶ……か」

 煙りの中、ユーシスに声をかけるニリア。爆発の拍子にミトの魔法が解けたのか拘束はされていなかった。そしてニリアはとある異変に気づいた。

「あーあー……」

 声が元通りの自分の声になっていたのだ。

「ユーシス! ユーシス!」
「ん…あ…ニリア」

 ニリアがユーシスを呼びかけると少し遠くからユーシスの声がした。ニリアが声のする方へと向かうと、煤で顔や体が黒くなったユーシスがいた。

「ユーシス、大丈夫か?」
「うん、平気だよ。ちょっと焦げ臭いけど」
「あぁ、爆発させたからな……」

 何を…とは言わず、視線だけを床に転がっているミトに移した。
 ミトは髪がチリチリになってアフロになってしまっている。気絶しているようで白目を向いていた。

「ニリア……私達元通りになったんだね」
「…あぁ」

 入れ代わりが治ったことに今気付いたユーシスは、嬉しそうにニリアに笑いかける。

「さて、とりあえずトイレから出ようか」
「うん。……あっ」

 立ち上がるニリアを見てユーシスは、ポッと頬を染める。

「なんだ? ユーシス」
「あの、ニリア……その、あのね、……」

 もじもじと恥ずかしそうにするユーシスに、なんだかニリアはニヤついてしまう。

「ユーシス、言って?」
「うん……あの、ズボンのチャック空いてる…」

 トイレにニリアの絶叫が響いた。



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