七夕だって!
裕也と二人、学校からの帰り道。商店街はいつもより人が多くざわざわとしていた。
「なにかしら・・・あ」
裕也は人混みの理由に気づいたのか嬉しそうに笑う。
「なんだ?」
「真知ちゃん。七夕よ」
「あぁ〜・・・」
そう言われて気づく。今日は七月七日だ。
商店街では買い物をした人に短冊を配っているらしく、子連れの人などが子供に短冊に願い事を書かせていた。
「あたしたちもいきましょ!」
「え」
と、裕也に手を引かれる。行き先は・・・肉屋?
「おじさん、ハムかつ二つちょうだい!」
「はーい」
そういうと小太りの気のよさそうなおじさんは香ばしい良いにおいのハムかつを二つ、ガラスケースから取り出した。ガラスケースには「揚げたて!」と真っ赤なペンで書かれた紙が貼ってある。
「二百円です」
「はい」
「ありがとうございました。あっちで短冊を飾られるのでよければどうぞ」
おじさんは笑顔で袋に入ったハムかつと短冊二枚をそう言って裕也渡した。
「真知ちゃん、たべよ!」
「ありがと」
少し離れたところで裕也からハムかつを受け取る。美味しそうだ。
一口囓ると、さくさくの衣と肉厚なハムが口の中で広がっていった。
「美味しい!」
俺が思わずそう言うと、裕也はでしょ? と嬉しそうに笑う。
「この前食べて美味しかったから、真知ちゃんにも食べさせたくて」
そう言われて少し恥ずかしくなる。なんと言えば分からなくてハムかつにかぶりついた。
「ふふふ〜」
だけど裕也は気にしている様子はなく、むしろ嬉しそうに笑っていた。
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