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寿司屋を出て、近くの公園のベンチに三人で座る。
お寿司は美味しかった。また行きたいと思う。あんなにいっぱい食べたから結構かかったはずなのに葛西は全部奢ってくれた。優しいな、って思う。まぁ本来なら彼氏の俺がちゃんと払わなきゃいけないんだけど、葛西が奢るって聞かなかったし。
そうして俺はカラオケから出てからやっと寿司ネタ以外の言葉を発する事にした。
「葛西」
「は、はいっ」
「お前ん家連れてけよ」
「え?」
「………続きしないのか?」
カラオケの続き、と葛西をじっと見つめると面白いぐらいうろたえ始めた。俺も結構恥ずかしい。
「え、でも…」
「もちろん誰かがお茶運びに来ないならだけど」
「……」
「………それに、俺、まだ出してない」
最後はボソッと呟くように言って、葛西の太ももに手を置いた。葛西はちょっと考えてたみたいだけど、俺の手を握るとチュッとキスしてこう言った。
「じゃあ、今からいこうか?」
「うん…」
そのまま葛西と見つめあってなんかお互いちょっと笑った。っていうところでものすごいため息が聞こえた。
「あのね、俺の存在忘れてるでしょー」
「あらやだ、ひろみまだいたの」
「死ねクソ兄貴。ねー、真知くぅん、考え直そうよぉ! 俺の方がいいって絶対!」
「……確かに、見た目はひろみ君の方が好みかも」
「真知ちゃん!」
「──でも、俺葛西の事好きだから」
恥ずかしいけどそう言うと葛西は嬉しそう笑いに、ひろみ君は悔しそうに地団駄を踏んでいた。
「ちくしょう! 久しぶりに見つけた好みのカワイコちゃんだったのにぃ!」
「あ、ひろみ。あたしたち今から家行くから帰ってこないでね」
「うるせぇ死ね! 真知君、俺諦めないからね!」
びしっと俺を指差してひろみ君は走ってどっかに行ってしまった。は、速い…。
「あははざまぁ。じゃ、真知ちゃん、あたしたちは家いきましょ?」
「うん」
葛西に差し伸べられた手を俺はキュッと握った。
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