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俺はモテる。男女共にモテる。
だが一度もお付き合いというものをしたことがない。
それは俺が…
「ただいま、母さん」
「お帰りなさい」
「はい、これお土産。母さん好きでしょ?」
「あら、わざわざいいのにそんなの」
ありがとう、とにっこり笑う愛しい母親。
俺、田宮真知は自他共に認めるマザコンである。
理想の相手はもちろん母親で、家事はもちろん学力、体力、美貌も兼ね備えた相手ではないとお付き合いはできない。
そんな厳しい条件を出してしまうほど俺の母親は完璧だ。
「真知君は本当親孝行のいい子ねぇ」
「あははは、母さんのためならなんでもするよ」
俺がマザコンなのは父親が他界していることも強く関係していると思う。女手一つで育ててくれた母さんには感謝しても仕切れない。
「最近学校はどう? 楽しい?」
「うん、順調だよ」
嘘だ。実は大変困っている。
面倒臭い相手に言い寄られていて四六時中引っ付かれているのだ。
でもそんなこと母さんには言えなくて…
********
「真〜知ちゃん! あたしお弁当作ってきたのよ。お昼一緒に食べましょう」
「母さんのお弁当があるからいらねぇ」
葛西裕也、こいつは男だ。男だけど…オカマだ。
俺はほんの少し前からこの葛西に言い寄られている。
「あらじゃあ食べ合いっこしましょう! あ〜んしてあげるっ!」
「いらねぇよっ!」
「んもう、そんなことい、わ、な、い、で!」
「やめろ」
葛西が女顔ならまだ見れたものだろうが、こいつは無駄にイケメンだし身長180pを越えているしサッカー部で筋肉もついている。明らかに不自然だ。
「もう! 一緒に食べてくれないならチューしちゃうぞ」
「う、うわ! 馬鹿! 顔近づけるな!」
「ほらチュー! チュー!」
「わ、わかった! 食べるよ!」
俺がそういうと満足そうに葛西はにんまり笑う。
…不気味だ。
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