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なんとか誤魔化そうとあくせくしていると、ひろみちゃん、否ひろみ君がずいっと葛西に近付いて喋り出した。
「俺、真知君にナンパされたの。顔真っ赤にしながら電話番号とメルアド聞かれちゃった」
うふ、と喋るひろみ君が悪魔に見えた。葛西は般若。
「なぁぁんですぅってぇ! 真知ちゃん貴方ねぇぇぇ!」
「あっあっうっ、ち、違! てか、なに、2人、知り合い?」
話し変えようと俺がそう聞くと葛西とひろみ君が顔を見合わせてため息をついた。
「………ひろみは弟なの。あたし達兄弟なのよ」
「あー、こんな兄貴とか最悪ぅ」
「あたしもこんな弟で最悪よ」
2人とも心底嫌な顔しながら言った。
俺はもうすっごく驚いて、間抜けに口をぽかんと開けてしまった。2人が兄弟?
アホ面しているだろう俺に、葛西はニッコリ微笑むと俺の肩をがしっと掴んだ。
「で、真知ちゃん。詳しくお話しして下さる?」
「あ、う、はい……」
「俺も話し聞きたいなぁ。真知君には付き合ってる人いないって言われたしぃ。騙されたー」
「はぁぁ!? 真知ちゃんそんな嘘まで!? ……チッ、どっかカラオケでも入ってお話ししましょ!」
「ご、ごめんなさい…」
葛西とひろみ君に挟まれて、俺は目的のぷうすけをゲットすることなくゲーセンを出た。
まだ死にたくないよ…
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