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俺の隣にいるひろみちゃんを見た途端葛西は眉をつり上げた。
「てめぇ……真知ちゃんと何してんだよ」
「あー、マジかよ……ついてねぇ。真知君こいつの知り合い?」
「えっえっ」
ひろみちゃんを殺す勢いで滅茶苦茶睨む葛西。突然声が低くなり男言葉になるひろみちゃん。
二人は知り合いなのか。死にたい。もう修羅場どころじゃない。
「気安く俺の真知ちゃんの名前呼んでんじゃねぇ! ブッ殺すぞ!」
「うっせぇな! 俺の勝手だろ! 黙れカマ野郎!」
「あぁん!? 人の事言える立場か!? お前も同じだろうが!」
「違うね! 俺は女装が好きなだけだ! それにてめぇと違って似合ってるからいいんだよ!」
「ふざけんなくそ野郎!」
「てめぇがふざけんな!」
葛西とひろみちゃんがものすごい形相でお互いを罵り合う。
葛西はヤクザみたいだし、ひろみちゃんはまるで男……え?
「う、うわぁぁ!」
「! ま、真知ちゃんどうしたの? どこか怪我した?」
「ひ、ひ、ひろみちゃん………男なの!?」
「え、あ、うん。そうだけど」
あっけらかんとした顔で言うひろみちゃ……いや、ひろみ君。好みだったから凄いショックだ。
もうなんか目の前の事を処理しきれなくて俺は呆然う。
まさかひろみちゃんが男だとは。いや、確かに背は高いし声はハスキーだしなんかゴツい気もしたけど全く気付かなかった。むしろ好みの体格だったし。日頃葛西の似合わない女装に見慣れているせいだろうか、ひろみちゃんは女の子にしか見えなかった。
「そんな………」
「………ちょっと待った真知ちゃん。さっき会ったにしては二人共なんか仲良くない? もしかしたらこいつとは前から知り合いなの!?」
「え………あ、その…」
これまたものすごい形相で葛西が詰めよって来た。うわやば、どうしよう。
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