5

 俺の隣にいるひろみちゃんを見た途端葛西は眉をつり上げた。

「てめぇ……真知ちゃんと何してんだよ」
「あー、マジかよ……ついてねぇ。真知君こいつの知り合い?」
「えっえっ」

 ひろみちゃんを殺す勢いで滅茶苦茶睨む葛西。突然声が低くなり男言葉になるひろみちゃん。
 二人は知り合いなのか。死にたい。もう修羅場どころじゃない。

「気安く俺の真知ちゃんの名前呼んでんじゃねぇ! ブッ殺すぞ!」
「うっせぇな! 俺の勝手だろ! 黙れカマ野郎!」
「あぁん!? 人の事言える立場か!? お前も同じだろうが!」
「違うね! 俺は女装が好きなだけだ! それにてめぇと違って似合ってるからいいんだよ!」
「ふざけんなくそ野郎!」
「てめぇがふざけんな!」

 葛西とひろみちゃんがものすごい形相でお互いを罵り合う。
 葛西はヤクザみたいだし、ひろみちゃんはまるで男……え?

「う、うわぁぁ!」
「! ま、真知ちゃんどうしたの? どこか怪我した?」
「ひ、ひ、ひろみちゃん………男なの!?」
「え、あ、うん。そうだけど」

 あっけらかんとした顔で言うひろみちゃ……いや、ひろみ君。好みだったから凄いショックだ。
 もうなんか目の前の事を処理しきれなくて俺は呆然う。
 まさかひろみちゃんが男だとは。いや、確かに背は高いし声はハスキーだしなんかゴツい気もしたけど全く気付かなかった。むしろ好みの体格だったし。日頃葛西の似合わない女装に見慣れているせいだろうか、ひろみちゃんは女の子にしか見えなかった。

「そんな………」
「………ちょっと待った真知ちゃん。さっき会ったにしては二人共なんか仲良くない? もしかしたらこいつとは前から知り合いなの!?」
「え………あ、その…」

 これまたものすごい形相で葛西が詰めよって来た。うわやば、どうしよう。



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