12

「あ、あの、お、俺もう行くね、またな、真知」
「う、うんまたね」

 少し顔を引きつかせながら兄さんは部屋を出ていく。
 俺もきっとひきつらせていたと思う。

「……葛西」
「ごめんなさい」
「………別に、怒ってない」
「あん、でも…」
「いや、俺が兄さんを連れてきたから。悪かった」
「あらん……」

 いきなり兄さん連れてくるなんて俺も良くなかったし…。やっぱりいきなり会わせるなんて良くなかったかも。

「俺は別に、葛西は良いやつだし、かっこいいし、兄さんに紹介したいなって思ったんだ。まあ、メイクで顔は隠れちゃったけど……」

 それに葛西は一応俺の彼女だし。
 家族に、彼女として葛西を紹介するのは無理だけど、友人としてなら紹介できる。
 せっかく兄さんが帰ってきたのだから、葛西に会わせたかった。

「やあん……嬉しいわ! 裕也感激!」
「わ、馬鹿! くっつくなら化粧落とせ!」
「あ、そうだった。すぐ落としてくるわ!」

 そしたらまたイチャイチャしましょ! と葛西にウィンクされなんだか俺は顔が熱くなった。
 イチャイチャ…するのか。



******


「母さん、葛西帰るって」
「あら、お夕飯食べていってもいいのよ? 今日はお兄ちゃんもいるし」
「ああ、でもいいよ。葛西も緊張するし」
「そう?」

 あれからイチャイチャしたあと、日も暗くなり葛西は帰ることになった。
 俺たちは一階に降りて、俺はリビングにいる母さんに、葛西の帰宅を告げる。
 すると、それじゃあ私もお見送りしようかしらね、という母さんと共に玄関にいる葛西の元へと向かった。

「あ、あらあらあら。お化粧落とすと男前なのねぇ」
「あらー、そうですか? ありがとうございますう」
「ほほほ、また遊びに来てね」
「もちろんです。じゃあね、真知ちゃん!」
「うん、またな」

 母さんは化粧をおとした葛西の素顔に少し驚いていた。まあ、美形だしな。
 なんだかんだいって、我が家デートはうまくいった……気がする。
 ただしデーモンメイクはもうやめて欲しい。


終わり。



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