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「…気持ち良かった?」
「……うん」
少し落ち着いた頃、葛西が俺のおでこにちゅっとキスをしてそう聞いてきたので、素直に頷く。なんだか俺達の間に漂う空気がほわほわとして気持ちが良かった。いわゆる良い雰囲気というやつなのかな…
それから下着とズボンを元に戻し、葛西とマッタリと部屋で過ごしていると、階下からどたばたと玄関で人が動いている音と兄さんの声がした。
「兄さんだ」
「は!?」
「兄さんが帰ってきた」
葛西にそう告げるとなぜかあわわわ、と叫び出し焦り始めた。
「どうした?」
「いや、あの、お、お兄様この部屋に来るわよね!?」
「うん。いつも真っ先に俺に会いにくる」
「ふわぁぁ! やべぇ、どうしよう、どうしよう!」
どうした葛西、と声をかけるが聞こえていないようだ。なんだ? と首を傾げる。
「兄さんに会うのが恥ずかしいのか?」
「え、まぁ、うん、そう! そうなの! 心の準備ができてないの! だから私はちょ」
「じゃあちょっと待ってろ。時間稼いでやるから心の準備しとけ」
「え」
俺は部屋を出て一階に向かった。
******
「真知ー!」
「兄さん」
むぎゅう、という音と共に潰れそうになるほど兄さんに抱きしめられる。
「友達が来てるんだって?」
「あぁ、うん」
「会わせて」
「まぁいいけど、後5分待って。あいつ心の準備したいんだって」
俺がそういうと、へぇ? と兄さんは器用に片眉だけあげて不思議そうにした。
実際俺も良く分からないが、乙女心というのは複雑なのよ、とクラスの女子に聞いたことがあるので時間稼ぎをしてやることにしたのだ。これも彼氏の勤めだ。
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