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家に向かう途中公園を通ると葛西が、ちょっとお化粧してくるわ、と公衆トイレに入っていった。
化粧…?そんなもの必要あるのか?
「うふん、お、ま、た、せ!」
「か、葛西……お前…」
待つこと数分、トイレから出て来た葛西の顔は大変なことになっていた。まるでデーモン閣下だ。ヘアースプレーを使ったのか、髪型は空へ向かって立てられている。顔はどこでどう間違ったのかデーモンメイクだし、職務質問されそうな風貌である。
でも俺には人の顔を中傷するなんて酷いことはできない。たとえそれがオカマだとしても。
「か、可愛いよ」
「あらーそぉ? 裕也照れちゃう!」
「で、でも少し派手じゃないかな」
「そんなことないわ、これぐらい普通よ」
デーモンメイクが普通だなんて、葛西はどこかおかしいのかもしれない。
というか、周りの視線を浴びて少し恥ずかしい。
「は、早く家に行こう」
俺は葛西の手を取って小走りで家に向かった。
*********
「ただいま」
家に着きそう言うと、家の奥からトタトタと歩いてくる音がする。
「お帰りなさい、早かった……のね。あ、あ、あの…お隣りの方は…」
「あの、母さん。こちら高校の友達の葛西裕也君。葛西、俺の母さん」
「どうも〜! 葛西裕也です!」
葛西を見た瞬間目を真ん丸にして固まる母さん。
…そりゃあ、びっくりするよな。
「ま、まぁ! そうなの! あ、どうぞ上がってくださいな」
「あ、どーも。失礼します」
だが母さんは笑顔で葛西を家に上げる。そして葛西も笑顔で家に上がる。
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