断固拒否!

 半年前に金橋三郎が消えた。
 虐めていた奴らは焦り出した。そいつらを横目で見ながら、俺は虐めに加担してなくて良かった、とほっと息をついた。
 主犯だった金武一弥は、金橋(名前が似ててややこしいったらない)が居なくなってから、目に見えてイラついていて、取り巻きに当たっていた。
 金武は目に隈が出来て、いくらか痩せたようだった。
 八つ当たりする金武に取り巻きはムカついたのか、離れていった。


******


 忘れ物をしたので慌てて教室に取りに戻った。
 教室に入ろうとすると、元取り巻き逹が中にいるのが見えた。
 俺はあいつらが苦手だ。教室に入るのはあいつらが帰ってからにすることにした。
 壁に背中を預け、携帯を取り出して時間潰しをしていた。
 あいつらはでかい声で喋るから話しがよく聞こえた。

「………でもさぁ、金橋が見つかんなくて俺ちょっとほっとした。虐めを苦に自殺、失踪とかだったらどうしようかと思ったぜ」
「だよな。俺ら金武に言われてやってただけだし」
「そうだよな。俺らまで虐めしてたとか言われちゃたまんねぇよ」

 思わず携帯をやっていた手を止めた。

「大体金橋って反応が面白いってか変わってるっていうか……ついいじりすぎただけで虐めじゃあねぇよな」
「そーだよ! あいつってさぁすぐびくびくして、目キョロキョロして面白かったよなぁ」
「なんかネズミみたいだったよな」

 ははは、と笑い声が聞こえる。
 俺は口をぽかんと開けてしまった。
 こいつら、あんな酷いことしといて、そんな意識しかなかったのか?

「真っ裸にしたら顔真っ赤にしてぶるぶる震えてさー」
「あいつちんこちっちぇから勃起してもちっちぇまんまなんだよな!」
「あっはっは、まだ俺ムービー持ってるぜー」

 確かに金橋はちょっと変わってた。いや、かなり変わってた。
 だから面白くて虐めがエスカレートしたのも分かる。
 金武が率先して虐めてたし、取り巻きだって最初はその気なんかなかったかもしれない。
 だけど、そんな言い方ないだろう。
 俺は思わず一言言ってやろうと、教室の扉を開けようとした。

「………でもさぁ、あいつ心配だよなぁ」
「………どこ行っちゃったんだろう」
「生きてるといいな」
「な。それになんか後味悪いしさ、早く帰ってきて欲しいよな」

 足が止まる。

「戻ってきたら謝らないとな……」
「そうだなぁー。ちょっとやり過ぎたよな」

 しんみりとした声が聞こえる。
 なんだ、こいつら反省してるんだ。
 俺はそのまま教室の扉を開けた。

「うわっ、びっくりした」
「なんだ真島か」
「うん、忘れ物」

 取り巻き逹が一斉に俺を見る。
 俺はさっさと忘れ物を取って帰ろうとする。
 扉を開けて、ふと振り返った。

「………帰ってくるといいな」

 そう言うと、元取り巻き逹はぽかんと口を開けた。

 なんだかんだいって虐めていたクラスのみんな金橋の心配をしている。
 だから金橋。早く戻って来いよ。


終わり。


あまり描写はありませんが私の中で、三郎が受けていた虐めはかなり酷いです。
そんな中まおさんからリクエストをいただき、少し悩みました!
でも、私なりに三郎を心配する虐めっこ逹が無事、出来上がりました!
お気に召すといいのですが…!


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