26

 思わぬ訪問者に一気に酔いが醒めたクーナはアシュラたちを小屋に入れた。
 小さなテーブルを三人で囲う。

「話しとは?」
「サブローのことだ」

 席に着くとクーナはさっそく聞いた。
 答えるアシュラの言葉に、またクーナは驚きを隠せない。

「サブロー君は、もう、ここには…」
「知っている。先日王が自ら捕らえにきたらしいな」
「………何の用なの?」

 酔いは醒めたとはいえ酒が入ってるせいか、アシュラたちに対する刺々しさがないクーナ。弱々しいクーナはとても儚くて今にも倒れてしまいそうだった。

「サブローを助けたくはないか」
「………僕の家は古くから陛下の家来として働いているんだ。陛下に忠誠を誓ってる。逆らうことなどできない」
「助けたくはないか、と聞いているんだ。忠誠心の話しなど聞いていない」

 アシュラはそんなクーナに少し声を和らげて訊いた。しかしクーナはうつ向いて答えなかった。

「まぁ、いい。明日また訊く。その時までに心を決めろ」
「………」
「…部屋を借りるぞ」

 アシュラがそう言ってもやはり何も答えないクーナだったが、アシュラはショーヤの手を引いて以前泊まった客室へ向かった。
 部屋に入るとショーヤは大きくため息をついた。

「ねぇアシュラ兄ちゃん、あいつ無理なんじゃない?」
「………どうだろう」
「そりゃあご貴族様のあいつがいれば便利だけど……」

 ショーヤはぽすん、と小さな音を立ててクッションに顔を埋める。

「それに陽の王からサブローを取り返したって俺たちがすぐコーデルに渡しちゃうんだからさ……」

 ぬか喜びじゃん、とショーヤは苦虫を噛み潰したような顔で言う。アシュラは何も言わずショーヤの隣に座る。

「コーデルはなんでサブローが欲しいんだろう……」
「さぁな。でもどんな理由があるにせよ、俺たちはサブローをあいつに渡さなきゃいかない。分かっているだろう?」
「うん……うん、分かってるよ。でも、あいつ俺の耳の事誉めてくれたよ……綺麗だって」
「…そうか」

 きゅっと辛そうに眉を寄せるショーヤの肩をアシュラはそっと抱き寄せた。



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