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「──約束が違う!」
激昂して男に怒鳴るアシュラをショーヤは心配そうに見つめた。
「仕方ないだろう! 今こっちはごたついててそれどころじゃねぇんだよ!」
「俺らがどれだけの事をしてきたと思っているんだ!」
ギリ、とアシュラは歯を噛み締めた。幼いショーヤの手を汚してまでここまでやってきたのは今日この日のためだ。それなのに…
「アシュラ兄ちゃん……」
「……大丈夫だ」
ショーヤはアシュラの服の袖をキュッと握り不安げな顔で見上げた。アシュラは薄く微笑みショーヤの頭を撫でた。
「お前らに本当にわりぃ事してると思ってるよ。でも、俺も上に言われた通りにしなきゃなんねぇだ」
無精髭の生えた男は気まずそうに言った。アシュラは男にすっと近づくと胸ぐらを掴んだ。
「おい。いいか、兄上達を解放しないなら、陽ではなくお前を殺すぞ」
「ひっ! か、か、か、勘弁してくれよぉ! 俺に決定権はねぇんだ!」
「………コーデルに会わせろ」
「わ、わわ分かった!」
怯える男は慌てて扉を開けた。アシュラはショーヤと共に部屋の中へと入る。
アシュラ達が陽殺しとなった全ての元凶がそこにはいる。アシュラはショーヤと繋ぐ手に力が入った。
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「ねーどこ行くわけ?」
「お静かに」
馬車に揺られ俺はどこかへ連れていかれる。両隣をボディービルダーみたいなおじさんが占拠してて俺は身動き一つとれず、窓にはカーテンがあって外は見れない。
「クーナさんのとこに返してよ」
「あなたはもうビンクスとは会えません」
「………ビンクスってクーナさんの事?」
「クーナ=ビンクス。やつの家名です」
無表情で答える筋肉マン。へぇ。でさ、もう会えないってどういう事?
いきなりクーナさんと引き離された上、馬車に詰め込んどいて、言うことがそれ? お前バカ?
そんな悲しい事言われたら泣きそうになるだろ、ちくしょう。
馬車から脱出したくても手枷つけられてるし、隣は筋肉マンだし。なんなのこれ!
誰がこんな事してくれちゃったの?
「ちんこ握り潰してやる」
クーナさんと俺を引き離すとか万死に値するから。
俺は不安と怒りを抱きながら馬車に揺られた。
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