16
恐ろしい事を言うクーナさんに内心ビクビクちんこもちょっとひくひくさせて、俺はクーナさんと2人町を歩いていく。
周りには沢山の人がいるけど、皆俺たちのことなんか気にしていなかった。色んな人が行き交っていて、顔を隠しててもろ怪しげな俺たちでも珍しくないみたいだ。 そうして歩いて人通りを離れ一軒の家についた。クーナさんはするりと顔を覆っていた布を剥ぎ取り、荷物から小さな鍵を取り出して家の扉を開けた。
その瞬間───
「……!」
「残念だったな。ビンクス」
この前の筋肉馬鹿のおっちゃんたちと同じような沢山のムキムキマッチョマンたちがいた。中でも一番マッチョマンな男がどや顔して俺たちを迎い入れる。
「ここで一体何をしている!? ここは私の──」
「お前分かってないのか? さぁ反抗せずに後ろの男を渡せ」
「貴様、一体何処の──!?」
マッチョマンたちに俺を引き渡せと言われて、クーナさんは俺をかばうようにして立ってくれた。さらにマッチョマンに何かを言おうとしてたけど、部屋の奥からこれまたかっちょいい男が現れたらびっくりしたのか固まってしまった。
「兄上達は元気か? ビンクスの三男よ」
「あ、あ、陛下!」
かっちょいい男はえらそうにクーナさんに話しかけた。クーナさんは途端に足を地面につけ頭を下げ、かっちょいい男を陛下って呼んだ。やだ、かっちょいい上に王様なの? 素敵…! でも性格悪そうだね。
てか、クーナさんが頭下げちゃったから俺、丸見えなんだけど…いやん。
「ふん………。ビンクスよ、後ろの男は連れていくぞ」
「は、はい」
「後で褒美を摂らせよう。お前が捕まえておいてくれたおかげで予定より早く見つかった」
それだけ言うと王様は、つかつかとこっちへ向かってきた。あ、帰るのかって思った俺が横にすいって避けようとしたら、王様が、ガッて俺の腕掴んだ。
「いって!」
「行くぞ」
捕まれた腕が痛くて叫んだけど、王様は全く俺を見ないで後ろのマッチョマンたちに声をかけた。そして無理やり家から引きずり出される。しかもいつの間にか家の前には馬車があった。
「ちょっ! やめろよ! 離せ!」
「………」
「やめろって! く、クーナさん!! クーナさん!!」
離してほしくて叫んだけど全く相手にされなくて、慌てて振り返ってクーナさんに助けを呼んだ。だけどクーナさんお辞儀したまま動かなかった。
「クーナさん!! クーナさんってばぁ! 早く助けてよ!」
もう馬車に連れ込まれるって時クーナさんが顔を上げたのが一瞬見えた。なんか泣きそうな顔してた。泣きたいのは俺なんですけど…
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