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「おはよー」
次の日、あくびをしながら俺はベッドから起き上がり、クーナさんに愛の挨拶をする。今日も愛してるぜベイベー!
「あ、おはよう三郎君」
「クーナさん今日もきゃわいいね……ってあれ? 荷造り?」
「うん。ちょっとしばらく街の方に下りようかなと思って」
「まーじで?」
「うん。この前のおじさん達ちょっと怖い人なんだ。怒らせちゃったからしばらく隠れなきゃ」
なななんですかそれは!
も、もちろん俺も連れてってくれるよね。2人で愛の逃避行、駆け落ちですよね。
「に、荷造り手伝う?」
「あ、じゃあこれ被って」
「あい! ……これ顔隠れちゃうよ?」
「隠して欲しいの」
「なるー」
「三郎君、早くね」
ふえぇ、なんかクーナさん怖いよぉ……えーん!
鬼嫁とかちょっとやだなぁ。
しかしクーナさん鬼気迫る顔してるで。それだけヤバいってこと?
「よし、大体まとまったかな……。じゃあ三郎君これ持って」
「ふぁい?」
「ほら、早くここから出なきゃ」
なんか俺たちロミオとジュリエット。許されない恋をした2人がついに駆け落ち…
いや、駆け落ちというより夜逃げに近い気もするが…
まあともかくクーナさんに言われた通り鞄を持って、部屋から出る。
「さあ、街へ行くよ!」
「あい」
心なしかクーナさんの目は輝いている。
実は買い物したいだけなんじゃねえの……
******
剣を持った若い男は乱暴に小屋の扉を開けた。
「隊長! ここにもいません!」
「…すでに逃げたか。早いな」
若い男に隊長と呼ばれた男は、感心した顔で顎に生やした髭をするりと撫でた。
そして隣にいる端整な顔立ちの青年に話しかける。
「陛下、いかがなさいますか?」
「なに、どうせ近くにおろう。探せ」
ニヤリと笑みを浮かべながら青年は言った。
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