14

「おはよー」

 次の日、あくびをしながら俺はベッドから起き上がり、クーナさんに愛の挨拶をする。今日も愛してるぜベイベー!

「あ、おはよう三郎君」
「クーナさん今日もきゃわいいね……ってあれ? 荷造り?」
「うん。ちょっとしばらく街の方に下りようかなと思って」
「まーじで?」
「うん。この前のおじさん達ちょっと怖い人なんだ。怒らせちゃったからしばらく隠れなきゃ」

 なななんですかそれは!
 も、もちろん俺も連れてってくれるよね。2人で愛の逃避行、駆け落ちですよね。

「に、荷造り手伝う?」
「あ、じゃあこれ被って」
「あい! ……これ顔隠れちゃうよ?」
「隠して欲しいの」
「なるー」
「三郎君、早くね」

 ふえぇ、なんかクーナさん怖いよぉ……えーん!
 鬼嫁とかちょっとやだなぁ。
 しかしクーナさん鬼気迫る顔してるで。それだけヤバいってこと?

「よし、大体まとまったかな……。じゃあ三郎君これ持って」
「ふぁい?」
「ほら、早くここから出なきゃ」

 なんか俺たちロミオとジュリエット。許されない恋をした2人がついに駆け落ち…
 いや、駆け落ちというより夜逃げに近い気もするが…
 まあともかくクーナさんに言われた通り鞄を持って、部屋から出る。

「さあ、街へ行くよ!」
「あい」

 心なしかクーナさんの目は輝いている。
 実は買い物したいだけなんじゃねえの……


******


 剣を持った若い男は乱暴に小屋の扉を開けた。

「隊長! ここにもいません!」
「…すでに逃げたか。早いな」

 若い男に隊長と呼ばれた男は、感心した顔で顎に生やした髭をするりと撫でた。
 そして隣にいる端整な顔立ちの青年に話しかける。

「陛下、いかがなさいますか?」
「なに、どうせ近くにおろう。探せ」

 ニヤリと笑みを浮かべながら青年は言った。



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