13

 俺は言い切った満足感で思わず笑顔を浮かべた。

「――何を言ってるの?」

 だけどサデスは不愉快そうに眉をひそめた。
 この声は怒ってる。

「誰にイシュアの事を聞いたの。ユリシア、こんな事冗談でも言っちゃいけないよ」

 サデスは冷たい顔で俺を見てそう言う。

「冗談なんかじゃないよ!」

 俺はサデスの手を掴んで、思わずそう叫んだ。
 そんな目で見ないで欲しい。
 覚悟はしていたけど、やっぱり信じて欲しい。

「全部本当のことだよ! 俺はイシュアなんだよ!」
「いい加減にしなさい。君がイシュア? そんなわけないよ」
「信じられないかもしんないけど、俺生まれ変わったんだ! ユリシアとして」

 サデスは俺の手を振りほどこうと手を振る。だけど俺は離してたまるもんか、とさらに強く握る。

「言わないほうが良いと思ってたよ! サデスは医者になってモテモテだし、俺貴族の息子になっちゃってるし! もうイシュアはいないんだし! サデスは美人の看護婦さんにモッテモテだし!」

 叫んでいるうちに涙が出てくる。

「だから今まで黙ってたよ! でもさ、でもさ! サデスが、あのペンダントつけてるから!」

 そう言うと、サデスの俺の手を振りほどこうとする力が弱まった。

「おまえは、まだイシュアの事、俺の事、忘れてないんだって思って、それで」

 ぐって腕で顔をぬぐうと、水みたいな鼻水みたいな液体がべちょってついた。うえぇ

「だから、俺は、俺もサデスの事忘れてないって、知って欲しくて」

 もうサデスから俺は手を離して、止まらない涙をひたすらぬぐった。
 本当はこんなかっこわるいとこサデスに見られたくない。
 でも、サデスが信じてくれるまで続けるんだ。

「俺はサデスが大好きなの! 好き好き好きなのぉ! うえぇぇぇぇ!」

 がばってサデスに抱きついてグリグリと顔を押しつけた。

 
 


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