12
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「ぼく! ぼく、今は診療中だから入らないで!」
「サデス!!」
看護婦さんの制止を振り切って診療所の扉をバタンと開けると、萎びたおばあさんを診察しているサデスが目を丸くしてこちらを見ていた。
「サデス! あのね、俺ね!」
「ぼくぅ〜! 入っちゃダメだってばぁ!」
サデスの元に駆け寄る俺。を捕まえる看護婦さん。
「あ、いや、今診察が終わったところだから、大丈夫──ってユリシア! 君、足を怪我してるじゃないか!」
「おやおや、やんちゃな坊やだこと。先生、じゃあまた来週ねぇ」
「あ、はいまた来週!」
お婆さんがいなくなったので、看護婦さんは待合室に戻って行った。やったね!
「さて、ユリシア。足の治療をしないと」
「あ、うん」
俺が椅子に座り、足を台に乗せ高くあげるとサデスは消毒液のついた脱脂綿で傷をこすり汚れをとっていく。ガリガリと容赦なく傷口をこすられとても痛い。
「イテ、イテテ!」
「我慢して」
「サデス酷い……」
俺が口をとんがらせてそう言うと、サデスはあははと笑う。俺の膝を見てかがんでいるから顔はよく見えないけど。
「あの、あのな、俺、サデスに言いたいことがあるんだ」
「なんだい?」
「サデスはこんな事信じられないかもしれないし、今更俺の事知ったって嬉しくないかもしれないけど…」
「……なんの話し?」
サデスは俺が真剣に話してるのに、冗談でも言うのかと思ってるのかクスクス笑ってる。こいつぅ。
「俺、お前があのペンダント着けてるの見て、サデスがまだ俺を覚えてるって分かって、それで…」
「ユリシア?」
そこまで言うと、やっとサデスはなんか可笑しいって思ったのか、作業を止め顔を上げた。
「お、俺、やっぱりお前のそばには俺がついてないとダメだって思った。だって俺は、俺はお前のヒーローで──」
「待って、さっきから何を言って」
捲し立てる俺に怪訝な顔でサデスは見てくる。
きっと意味わかんないだろうな。いきなり七歳の子供が死んだはずの幼なじみだって言うんだから。
サデスの言葉を遮って俺はついに告げた。
「──お前のイシュアなんだから。サデス、俺、イシュアなんだよ。イシュア=ミヒ。お前の幼なじみなんだ」
ポカン、と口を開けてイシュアは俺を見ていた。
よし、言ったぞ!
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