11
次の日、ひたすら悩んで足りない頭を捻らせながら散歩をしていると、砂利道で俺は石に躓き転んでしまった。
「──いってぇ……」
見事なまでに擦りむけた膝小僧はドクドクと脈打ち、血と小石で汚れていた。
俺はズキズキと痛む右足に、歩くことをやめその場に座り寝転んだ。ゴロゴロとした石が背中にあたり痛い。
上を見上げると生い茂った大きな木が見えた。木にはたくさんの真っ赤な実が成っていた。
あぁ、あれは昔……
*******
『イシュアッ! 大丈夫!?』
『いてて……』
木からまっ逆さまに落ちてしまった。サデスが心配そうに俺を覗き込む。
『ねぇ大丈夫? どっか痛くない?』
『へへへ、大丈夫だよ!』
涙目になるサデスを心配させまいと俺は立ち上がってニカッと笑う。実際、体は大丈夫だ。
『だから僕やめとけって言ったのに…』
『まぁいいじゃんか。ほら、それより見ろよ。実、取れたぞ!』
『あ……』
手のひらにある木の実をサデスに見せると、あっという間に笑顔になった。
『欲しかったんだろ?』
『うん………ありがとうイシュア!』
サデスは嬉しそうに木の実を受け取り、笑ってくれた。
********
小さい頃の思い出。
それを思い出して俺はやっと分かった。俺は何よりもサデスに笑っていて欲しいんだ。心の底から。
サデスが好きだ。
もう臆病になってなんかじゃダメだ。だってサデスは知らないんだ。俺が世界で一番好きなのはサデスだって事。この俺に好かれるなんて凄い事知らないなんてかわいそう。
もしサデスが信じてくれなくたって、というより現実主義者のあいつは信じないだろうけどそれでもいいや。一度は死んじゃったけどまたサデスに会えた、それだけで満足しなきゃいけないんだ。
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