10

「ねーえ、パパン」
「なぁにユリシア君?」

 寝る前、絵本を読んでくれる父親に俺は尋ねた。

「もしママが死んじゃったとするでしょ。だけどしばらく経ってママは赤ちゃんになって生まれ変わるの。大きくなったママはパパと再会するんだけど、自分がママだって言えないの。その時パパは、ママがママだって知りたい? 見た目も年齢も何もかも変わった新しいママでも会いたい?」
「………うーん」

 父親は唸りながら考え始めたようだった。いきなり喋り出したせいか最初はちょっと驚いてたけど、真剣に考えてくれてるみたい。

「パパは、ママの事が大好きだから、会いたいいかなぁ。どんなママでも愛せるし、受け止められるよ」
「でも、ママは前のママじゃなくて、新しいママの家族だったり友達がいてすごい幸せなの。だけどパパの事も好きなの。どっちも好きなの。それでもパパを選んで欲しい?」
「あはは……ユリシア君難しいこと言うなぁ…」

 俺の言葉に父親は、困ったように眉を八の字にする。

「………じゃあユリシア君だったらどうする? ユリシア君がママだったらパパを選ぶ?」
「え……」

 俺がママだったら?
 そんな事分からない。だって悩んでいるからパパに聞いてるのだ。

「お、俺は……パパが楽しそうにしてたらそれで…」
「じゃあもしパパが楽しそうじゃなかったら、ママだって言う? パパがママを忘れずにいたら」
「………」
「やっぱりパパは、ママに会いたいな。だってママはパパのたった一人の奥さんだもん」

 何も言えなくなってしまった俺の頭を撫でながら、父親は優しい笑みを浮かべてそう言った。

「さ、もう寝よう?」
「うん……お休みなさい」

 俺は、俺はどうしたらいいの?
 サデスに言いたくてたまらないけど、パパみたいに受け入れてくれるかなんて分からない。もしサデスが受け入れてくれなかったら…考えるだけで怖くて堪らなかった。



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