後日談その7
『──つまりあの人まぁくんの元彼ってこと?』
驚きと嫌悪の表情を浮かべながら先生はそう言った。そんな先生の顔に、薄々覚悟はしていたがショックを受け、俺がうなだれながらも頷くと、先生は「そっか」と言ってそれ以降口を閉じてしまった。
沈黙のまま気まずい食事は終わり、最後に車で先生を家に送ろうとしたがタクシーで帰ると断られた。それも凄いショックだった。
俺は1人寂しく車に乗ると家に向かって車を出した。
「まいったなぁ……」
思っていたよりもダメージを受けた。
あんなのほほんとした馬鹿作家なら、俺がいなきゃ何もできない生活能力皆無な人なら、俺をいい年してまぁくんって呼ぶ清水先生なら、もしかしたら笑って受け入れてくれるかもって思った。
まさかこんな形でゲイだと知られてしまうなんて。
先生のあの表情を思い出すと胸がキュッと痛んで目が熱くなった。
もうやだ、これから仕事どうすればいいの。
******
涙で視界は滲みつつも無事、家にはたどり着いた。
鬱々としながら駐車場に車を止めて部屋に向かう。
「真也!」
部屋の前にはあいつ。あ、そうだ。こいつがいたんだ。
「辰己……」
こいつのせいで俺、先生に嫌われたんだって考えたらムカついたけど、よく考えたら嫌われたのはこいつのせいじゃない。俺がゲイなのはもともとだし。
だけど先生にバレたのはこいつのせい。
「待ってたんだよ。部屋入れてくれるだろ?」
「お前なんか死ね!」
「お、おいおいなんだよ。お前が家に来いって──」
お前なんか二度と家にあげてやるもんか。どうせ俺が大事に冷やしといたプレモル飲む気だろ。
くそ、お前のせいで…! お前なんかプレモル飲む資格ないんだ!
「真也お前…泣いてるのか?」
「うるせぇ! ど、どっかいけよもう…」
「真也……」
「こ、っちくんな! 帰れよっ!」
もうお前となんか話すことはないんだ。
ちくしょー、全くしょうがないなお前はみたいな目してやがる。この勘違い野郎め。
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