後日談その6

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 思いの外先生との美術展は楽しかった。

「まぁくんはどの絵が気に入りました?」
「そうですね、あの果物を持った少年が描かれたやつなんか好きです」
「あぁあれかぁ。確かにいいかも」

 三つ星レストランで美味しいご飯を食べながら先生と絵の感想を言い合う。
 ご飯はとっても美味しいし、幸せ! しかも先生のおごり! やったね!

「僕はねぇ、あの老女の・・・」
「──真也!」

 先生がそう喋り出した時だった。突然後ろから俺の名前を誰かが呼んだ。
 えっ、って思って振り返るともう最悪。
 すごい形相したあいつがいた。なんでいるの、なんでいるの!

「誰だよそいつ!」

 先生を指さしてそう叫ぶあいつ。やめろよ、先生いきなり指さされてめっちゃびびってるじゃん。もうやだー!

「え、なに、僕?」
「――先生、気にしないでください。おい、さっさとどっか行けよ」
「真也! おまえ、やっぱりもうほかの男に」
「はぁ!? ふざけ・・・」

 これまたぶっとんだ事を言うあいつにすっごいむかついたけど、ここ三つ星レストランの中。先生も不安そうにこっちを見ているし。
 思わず怒鳴りそうになったけど抑えて抑えて・・・

「あー、後で話そう。俺の家にでも。な?」
「・・・」
「ここレストランだぞ?」
「・・・・・・・・・分かった」

 俺が回りを見渡しながらそう言うと渋々、という感じであいつは引き下がった。助かったー!
 どうやら近くの席で誰かと食事をしていたらしい。そこに俺たちが来ちゃったってわけか・・・いやぁこんな恐ろしい偶然ってあるんだね。

「先生お騒がせ」
「――まぁくん、どういうこと?」
「説明します・・・」

 あ、先生怒ってる。そりゃそうだよね、知らないやつにいきなりそいつ呼ばわりされちゃったんだもん。ごめんなさい、俺のせいだ。せっかくの食事が台無し・・・
 あーあ、いい感じに楽しかったのになぁ。




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