後日談その5
そしてついにその日が来た。
「まぁくん、待ちました?」
「いいえ」
「では行きましょうか!」
待ったも何も、俺が車を出して先生の家まで迎えに行ったのだけれど。やっぱりこの人ちょっとずれてる……
「じゃ、出しますね」
「はーい。あ、僕水筒にコーヒー淹れてきたんで、良かったらまぁくんどうぞ」
「え…」
「どうぞ?」
「………いただきます」
家事が壊滅的にできない先生が淹れてきたというコーヒー。
………飲みたくない。飲みたくないけど、キラキラと期待のこもった目で見つめられ仕方なく受けとる。
こんなことなら正露丸持ってくれば良かった。
俺は意を決して水筒の蓋を開けた。
「………美味しい」
あれ、なんで? なんで美味しいの?
このコーヒー、すんごく美味しいんだけど。
「うふ、僕、昔からコーヒー淹れるのだけは得意なんです。ちゃんと豆から挽いて作ってるんだよ?」
「へぇ………ありがとうございます。すごく美味しいです」
どや顔がちょっと、いや、かなりムカついたけどコーヒーが美味しいから許す。いやぁ、俺コーヒー好きなんだよね。でも最近飲めてなかったなぁ。
あいつがコーヒー嫌いで、匂いがするのもやだって言うからコーヒー飲むの控えてたんだよね。俺って健気。でもまぁ、別れたわけだしこれからはガブガブ飲もう。
「家に来てくれればいつでも淹れてあげますよ」
「………そうですか」
それってちょっといいかも……
あ、でもそんなことしたらこの馬鹿作家の思うツボだわ! 家事全部やらされるに決まってる。
まあコーヒーなくても十分、やらされてるんだけどね。家事嫌いじゃないから別にいいけど…
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