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 ムーシャは先日下界に下りて遊んでいるときにとんでもないものを見てしまった。
 下界の人間の娯楽雑誌だ。

『あぁ! あなた! もっと! あぁあん!』
『あぁ…あ…気持ちいい! もっと! あっあっ!』

 裸体の女性にまたがって腰を振る男性。そして気持ちよさそうに顔を歪める女性。

「なんだこれ?」

 ムーシャは見たことないものに興味津々だ。似たような雑誌を店で見つけ購入しては読みあさった。そうして30冊ほど読んでようやく内容を理解した。

「なるほど…子作りは気持ちが良いのか! ふむ、俺もしてみたい!」

 セックスと子作りは別のような気もするが、ムーシャは違いが分からないようだ。子作りをしようと意気込む。
 下界から帰り、さっそく爆弾発言をした。

「父上! 俺は子作りがしたい!」
「む、ムーシャ?」
「子作りとやらをしてみたいのだ!父上、俺と子作りをしよう!」

 家族だんらんの食事中にとんでもないことを言い出す。

「む、ムーシャ子作りは雄同士ではしないよ。それ以前にどこの誰にそんなことを!」
「雌ならいいのか? じゃあ母」
「ムーシャ! 家族はそんなことしない!」
「じゃあチェルに頼むからいいよ!」
「や、やめなさい!」
「なんでだめなんだ?子作りとは楽しいものなのだろう?俺もしてみたいのだ!」

 ムーシャは子作りというものの概念を全く理解していない。
 父も母もどうしたものかと頭を抱える。姉に至っては呆れたのか口をぽかんと開けている。

「む、ムーシャどこでそんなことを?」
「どこってそりゃげか」
「下界に行ったの!? あれほど行っちゃいけないと言ってるのに!」

 気を落ち着かせた母親がそう尋ねるとムーシャは口を滑らせてしまった。
 下界に行ってはいけない、と日々教えている母親はムーシャの言葉に烈火の如く怒る。



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