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 その日の夜、兄弟とランバルトは話しをした。というより、二人がコナタに対して話しをした。コナタは話しを聞いていくうちにどんどん不機嫌になっていった。

「……そんなの聞いてねぇ」

 ナユタが出稼ぎに行くと聞いてコナタはむくれた。

「言えば怒るだろ」
「……兄ちゃん、ここには知り合いに会いにって言ったじゃねえか。話しが違う」
「コナタ、そう怒るなよ。俺がしばらく留守にする間、ランバルトが世話をしてくれる。学校にも行けるんだ」

 コナタはそっぽを向いてムスッと言った。ナユタはそんなコナタをたしなめるように説明していく。

「お前ずっと学校に行きたがってたろ?」
「そーだけど……」

 兄がいなくなり他人と暮らす。ナユタは不安を感じて素直には頷けない。学校には行きたいがそれ以上の不安があった。

「出稼ぎってすぐ帰ってこれないんだろ。長いんだろ」
「まぁ……一年以上はかかるかな」
「………兄ちゃんとそんな長い間離れるなんて嫌だ…」

 コナタは下を向いて少し泣きそうになりながらそう言った。
 ナユタはこんなにかわいい弟と離れるのは辛いなぁ、と改めて思った。ランバルトも二人の心境を察し胸が傷んだ。

「コナタ、ちゃんと手紙書くよ」
「………手紙なんかじゃ兄ちゃんが元気か分からない」
「……ビデオレター送るよ」
「………ビデオなんかじゃ兄ちゃんに抱き付けないから意味ない」
「………コナタ、兄ちゃんを困らせないでくれ」

 駄々をこねるコナタに、眉を八の字にしてナユタはそう言った。コナタは顔をあげてキッとナユタを睨んだ。

「兄ちゃんが俺を困らせてるんだろ! バカ!」

 目にいっぱいの涙を溜めてコナタはそう叫ぶと、その場から家の二階へと走っていった。
 慌ててナユタはコナタを追おうと立ち上がったが、ランバルトはそれを手で制すると「俺が行くよ」と二階へ上がった。



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