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ナユタとコナタは仲の良い兄弟であった。幼い頃に親を亡くした二人は支え合いながら今まで生きてきたのである。
兄、ナユタは二十歳になったばかりの年若い青年だが、親を亡くしてから苦労ばかりのためか年より幾分老けて見えた。コナタを養うために十二の頃から働きづめで、とても成人を迎えたばかりの男には見えなかった。
一方コナタはやっと十五になったところで、まだ幼く、少年から青年へと変化中であった。コナタも苦労してここまで育ってきたが、ナユタに少々甘やかされて育てられたせいか中身は子供であった。それでもコナタは兄を助けようと頑張ってはいるし、彼なりに大人ぶっているつもりなのだ。
さて、そんな二人は長くすみ続けていた村を出てナユタの知り合いがいるターランという町に来ていた。
兄ナユタが出稼ぎで長期間遠方に行くことになり、コナタを知り合いに預けることにしたのだ。コナタを村に残すこともできたが、ナユタはコナタを学校に入れさせようと知り合いのところに下宿を頼んだのだ。
「さて、地図によるとあいつの家はここら辺だと思うのだが…」
ナユタの元に届いた手紙に書いてある地図を見ながら兄弟は町を進んでいく。
手書きの地図はお世辞にも上手とは言えず、兄弟は解読するのに難航していた。
「あ、兄ちゃん! ここじゃね?」
「おお、そのようだ!」
兄弟が手紙には町に入ってすぐ、と書かれていた家にたどり着くのは町に入ってから三十分ほどさ迷ってからだった。
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「遠いとこから大変だったろ。よく来たな」
兄弟を迎えたのはガッシリとしつつ、都会らしい洗練された美男だった。コナタは手紙の文法や文字からてっきり、もっさりした熊男を想像していたため男をみるとポカンと口を開けてしまった。
「あぁ、お前がナユタの弟か。ランバルトだ。よろしくな」
「よ、よろしく…」
ランバルトは日焼けした顔でくしゃっと笑いコナタに握手を求めた。コナタは慌てて口を閉じ、自分よりも一回りは大きいだろう手を握った。
「まぁ二人とも長旅で疲れているだろう。今日はとりあえず休め。詳しい話しは明日しよう」
「そうさせてもらう」
ランバルトが用意しておいてくれた食事を食べ、二人は風呂に入るとその日は寝床についた。
寝床に入ってコナタは布団がふわふわと柔らかいことに大変驚いた。コナタが今まで使ってきた布団は固くてごわごわしたものだったのだ。「兄ちゃん! ふふふ布団が…!」と大喜びするコナタを見てナユタは微笑んだ。
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