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日が暮れたころ宗一郎は目を覚ました。
「起きたか」
「あぁ…」
「お主、麦は食えるか?」
キリは麦を柔らかく煮たものを出した。宗一郎が何を食べるのか分からないので少し不安のようだ。
「ああ食べられる。…用意してくれたのか?」
「ふん、別に残っただけじゃが」
そっぽを向いて言うキリを宗一郎は可愛いらしいなと思った。
肌の色は朱色で、目も吊り上がっているし、背も自分よりずっと小さく人とは掛け離れた容姿だが、言動の一つ一つに愛らしさを感じる。
「なんじゃ…さっさと食わんか」
「あぁそうだな」
宗一郎がジッとキリを見ていると、キリが不審な顔をする。宗一郎は笑みをこぼして食事を始めた。
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翌日。
「世話になったな」
「うんにゃ。気をつけて帰れ」
雨も止み、宗一郎は村に帰っていった。
案の定、村の者達は凄く心配していた。何があったのか、どこで泊まったのか、と根掘り葉掘り聞かれたがキリの事は言わなかった。
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