3

 養父との行為が終わり、僕は寝室を出てシャワーを浴びに階下へ降りた。養父はそのまま寝るらしく布団に入っていた。

「兄貴」

 後ろから声をかけられ、驚いてビクッと肩を震わせた。慌てて振り替えるとそこにはきぃちゃんがいた。

「あ、おか、えり」
「ただいま」

 いつ帰ってきてたのだろうか。僕は無表情で見下ろしてくるきぃちゃんが怖くなった。

「僕、今から風呂入るから…」

 お休み、と言って背を向けたら顔のすぐ横にダン、と凄い音を立ててきぃちゃんの手が置かれた。

「どういうこと」

 あ、バレちゃったんだな、と思った。知られたくなくてずっと必死に隠してきた養父との関係をきぃちゃんはきっと知ってしまったんだ。僕と養父の行為を聞いてしまったんだ。

「き、きぃちゃん」

 僕は必然的に涙声になった。きぃちゃんに嫌われたくない。きぃちゃんだけが僕の生き甲斐なのだ。

「父さんとヤってんの?」
「きぃちゃん、きぃちゃん、僕、僕」
「信じらんねぇ…」

 きぃちゃんは凄い怒っている。僕はみっともなく言い訳をしようと必死できぃちゃんにすすりついた。きぃちゃんは僕の腕を振り払い、頭を抱えた。

「ありえねぇ、何やってんだよ…」
「きぃちゃん、きぃちゃんごめんなさいごめんなさい」
「謝ってんじゃねーよ!」
「き、きぃちゃ」
「なんで兄貴が泣くんだよ! 泣きてぇのは俺だよ!」

 きぃちゃんは泣きそうな顔で僕を殴った。痛いけど平気だ。だって僕は殴られて当然なのだ。きぃちゃんの大好きな父親とセックスしているから。

「何やってんだよ、兄貴ぃ、何やってんだよぉ…」

 泣き崩れたきぃちゃんはもう僕を見てくれなかった。


******


 次の日、僕はひっそりと家を出た。必要最小限の荷物ときぃちゃんの写真を持って。もうきぃちゃんと一緒にいることはできなかった。
 僕は馬鹿だった。きいちゃんを傷つける前に僕はこの家から消え去るべきだったのだ。僕はきいちゃんを必要としていたけれど、きいちゃんは違った。僕は自分を犠牲にしてきいちゃんを助けてるつもりでいたのだ。
 きぃちゃんに泣かれ、僕は自分でも信じられないほど冷静になった。きぃちゃんにバレてしまって動揺はしたけど、瞬時に荷物を作って家を出ることを決めた。早朝、長年過ごした家に小さくさよならと呟き家を出た。
 僕が25歳、きぃちゃんが17歳の時だった。



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