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真田は凄い上機嫌だった。数学の授業の時は頼んでもないのに答えを教えてくれたし、寮に帰ってからも俺の大好物のカルボナーラを作ってくれた。
そして今は頼んでもないのにお風呂で俺のちんこを洗おうとしている。
「真田いいって! ちんこは自分で洗うよ!」
「やだ大丈夫、よしくん。ちゃんと先っぽの皮剥いて丁寧に洗うから」
「やーめろ! やめろ!」
お風呂で両手でちんこを隠して逃げ惑う俺は凄いみっともないと思うけど、真田にちんこを触られたくない。
必死で逃げるけどやつも必死。
「よしくん! よしくんのちんこ!」
「やめろ! ちんこやめろ!」
真田、目が血走ってる。怖い来るな。誰か俺を助けて。
「あっよしくん!」
俺のつるっと足が滑った。真田が慌てて手を伸ばしてくれたけど、ガンていうものすごい音と頭に衝撃がして俺の意識は遠退いていった。
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「んあ?」
「あ、よしくん? よかったぁ」
目を覚ますと真田がいた。なんか泣いてる。そして頭が痛い。
「よしくんたら風呂場でひっくり返って頭ぶつけたんだよ?」
「………あ、そう」
よしくんたらドジだなぁ、って言われてお前が俺のちんこを狙うからだと言う気がなくなった。なんだこいつ。悪いのは俺だけか。
ムカついたのでプイッと横を向いてやった。
「よしくぅん……拗ねないでよ」
拗ねてねーし。勘違いストーカーめ。消え失せろハゲ。
「………」
「……僕さぁよしくんが急に手なんか繋いでくるから興奮しちゃったんだよ。もう天にでも昇っちゃう気分だったの。ごめんねぇ、怒らないで?」
「………別に怒ってねーし」
そんなに嬉しかったのか。いっそ昇っちゃえば良かったのにな、天国。
でもよく考えたら、この二年、真田が自分から俺に触ってくることなんかなかった。手だって無理やり繋いでくる事なんかなかった。さっきは俺に触ろうとしたぐらい暴走しちゃったって事か。なんか可愛いね。でもちんこに触ろうとするのはマズイっすよ、やっぱり。
「じゃあもう遅いから、僕寝るね……」
「……待てよ」
怒りが収まった俺は部屋から出ようとする真田の腕を掴んで呼び止めた。そのままぐっと引き寄せて真田にキスをする。
「……お休みのチュー、忘れてるぞ」
それだけ言って俺はさっさと布団を被った。なんか後ろで真田ギャーギャー騒いでたけど無視。絶対無視。
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朝、俺がリビングに行くとすでに真田が起きていて満面の笑みで俺を出迎えた。
「おはよ……」
「おはよう! よしくんおはよう!」
すっげぇ嬉しそう。めっちゃ嬉しそう。うわぁ早まったかなぁ俺。
「よしくんよしくん、おはようのチュー!」
「え、あ、はい、チュー」
真田は目をきらきらさせながら自分の唇を指差していた。俺はやつの頬っぺたにキスをしてやった。
「え、なんで? 口じゃないの?」
「そう簡単にしてやるわけないだろ、ばーか」
そう言うと真田がガックリと肩を落とした。
それ見て俺なんか凄い嬉しくなった。
この二年、俺はずっと真田に振り回されてきた。それがどうだ、今真田は俺に振り回されている。ふふん、ふふふん。楽しい。凄く楽しい。
「よし、真田朝飯だ」
「え、あ、うん。今やるね!」
ニコニコ上機嫌な俺を不思議そうな目で見てくる真田。
だが、これからだぞ真田。俺の反撃はこれから始まるのだ。
明るい未来と美味しそうな朝食に俺は満面の笑みを浮かべた。
end
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