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突然だが昔話をしよう。あれは二年前のことだった。
生徒会に入ることなり、副会長となってしばらく経った時、突然あいつは俺の元にやってきてこう言ったのだった。
「養子縁組を前提に付き合って下さい」
ポカンとする俺にあいつはさらに話した。
「僕はよしくんの親衛隊隊長の真田麻貴。そしてよしくんの未来の旦那様だよ」
そして長々と結婚式場の話しをし始めた真田に俺は戸惑った。
なんだこいつ、何言ってんだ? と俺の頭の中はハテナで一杯だ。しかもよしくんてなんだよ。俺の名前は確かに義之だけど、くん付けで呼ぶなよ気持ち悪い。俺はきっと汚いものを見るような目で真田を見ていただろう。
だけど真田は全く気にせず、今度は新婚旅行の話しをし始めた。
「僕はグアムなんかどうかなって思ってるんだけど、よしくんはハワイが好きだからハワイでもいいよ。あ、両方行けばいいのかなぁ」
「え、と、真田? お前何言ってんの?」
「やだなぁよしくん。まぁくんって呼んでよ」
ゾッとした。もうこいつはヤバい。マジもんだって思ったね。
目の前の真田が怖くて怖くて仕方がなくなった。とりあえず俺はあいつのちんこを蹴って逃げた。
だけどそれから二年経った今でも俺は真田に迫られている。今思えばあれが悪夢の始まりだったのかも……
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「よーしーくん!」
昼休み真田から逃げたくて便所の個室で飯を食ってたら上から声がした。ぎぎぎ、と首だけ上に動かすと真田が満面の笑みで上から俺を覗いていた。怖い。
「もう! なんでそんなところでご飯食べてるの。僕と一緒に教室で食べる約束したの忘れちゃった? あはははは、よしくん早く扉開けて」
「う、うんごめん今開ける」
ちくしょー、やつが怖すぎて断れない。抑揚のないしゃべり方やめて欲しい。
嫌々俺は便所から出る。真田はニコニコニコニコしながら俺を出迎えた。でも目が笑ってない。
「よしくんたら昨日も一昨日もその前の日も僕との約束忘れちゃってたよね? ダメだよもう。早く覚えて」
「うん、明日はちゃんと真田と食べる」
嘘だ、絶対逃げてやる。
「約束破ったら今度はお仕置きだからね?」
……やっぱりやめておこう。
俺は大人しく真田に手を引かれ男子トイレから出た。
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