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 もう疲れた。あの馬鹿作家もう疲れた。あの後ひいひい言いながらポカリ買ってきてやって、帰ってきたらキッチンが泡だらけ。洗い物しようと思って、だぁ? 病人は大人しくしときゃいいんだよ。大体洗剤使いすぎ。その後また熱上がって動けなくなるし。なんなのもう。作家って頭いいんじゃないの。

「たく、やってらんねー」

 私生活めちゃくちゃだし仕事も疲れるしもうやだー! 綺麗な男の子にマッサージでも、うけたい気分。お兄さん、お兄さんマッサージしてあげようか? 30分で千円ポッキリだよ。みたいな。片言の怪しい外国人でも誰でもいいから俺を癒してくれ。いくらでも払っちゃう。いないか。あーあ、どこかに俺の事が大好きで金持ちでハンサムで優しくて浮気しない一途な男いないかな。そんな男がいたらさっさとあいつ捨てて乗り換える。んな馬鹿みたいな事考えるからダメな男に引っ掛かるのかね。
 そんな事考えてたら携帯が鳴ってびくってした。しかも仕事用の携帯ね。嫌な予感しかしないよもう。

「はい、棚森です」
「しぃ君? あのね、僕清水です。実はね、さっき、あの、ベッドから落ちちゃってね」
「今行きます………」

 あの馬鹿作家め。今何時だと思ってんだよ!
 もう急いでタクシー乗って清水先生の家へ向かう。あぁもう結構かかるし。経費おちるからいいけどさ。マンションついたらエレベーターのボタン連打。飛び乗って先生の部屋へ。合鍵で開けて寝室へ向かうと………

「先生!」

 びっくりした。先生仰向けのまま倒れてる。慌てて駆け寄った。

「大丈夫ですか!」
「あはは……腰が痛くて…」

 馬鹿先生笑って言ってるけど俺は笑えない。だって先生顔真っ青。慌ててそこらへんにあったブランケットで先生を包んで湿布を腰に貼る。

「どうしましょう。先生ベッドにのせたいですけど、のせる時余計痛めるかもしれません」
「いや、大丈夫です。床のほうがつらいから」
「分かりました。じゃあ気を付けて運びますから」

 俺は先生をそっとお姫様抱っこしてベッドにのせた。あれ、お姫様抱っこって余計悪くするんじゃ……分かんない。まぁいいや。

「先生大丈夫ですか」
「………!…!…!」

 先生、無言で痛みに耐えてた。おうぅ、すみません。とりあえず布団をかけてあげる。

「今日は私泊まりますから」
「え…あ、でも悪いよ」
「いえ、先生の事が心配ですから」

 ぼっ、と先生の顔が赤くなった。やだーまた熱ですかねぇ? とりあえず今夜は痛み止めでも飲ませておくか。明日になったら病院連れて行こう。

「じゃあなんかあったら呼んで下さい。リビングにいるので」
「う、ん! ありがとうしぃ君!」

 どういたしまして、先生。お前の世話は俺の仕事だ。俺は寝室から出てリビングにあるソファーに横たわった。ひゃー、先生意外と重かったから俺がぎっくりやるとこだったよ、全く。

「疲れたー」

 先生に聞こえないように小声でぼそり。だって大変だったんだもん。とりあえず先生はもう寝るだろうし俺もソファーで寝る事にしよう。明日は忙しいぞー。なははは、やだね全く。あいつの事もどうにかしなきゃ。ああ、鬱。

「しぃ君! ちょっと来て下さい!」

 あら早速なにかしら。
 そうだ、今度こそは俺の名前は先生にしんやじゃなくてまさやだって教えないと。しぃ君じゃなくてまぁ君ですよ、先生。

「はい今行きますね」

 慌てて謝罪する先生を思い浮かべ、俺はニヤァと人知れず笑った。

end.



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