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 また宗一郎も雨が少し収まったのをみて、大木の下の雨宿りをやめもっと雨を凌げるところはないか、と探しはじめた。

「おぉ、ちょうど良い薪じゃ」
「あぁ寒い寒い」

 二人は偶然にも出会った。
 キリは初めて見た人間に目を丸くし、宗一郎は角の生えた鬼の姿に目を丸くした。
 お互いが見つめ合って十秒ほど、キリは後ろに飛びのいて宗一郎にこう言った。

「なんじゃ! お主は! なんじゃ!見たことないぞ!」

 キリは初めて見る人間に驚き、警戒している。
 またそれは宗一郎も同じで鬼の存在に恐怖していた。

「お、俺は森を下ったところの村に住んでて、きょ、今日は狩りに来たんだ。それで雨で迷ってしまって…」
「村? 村なんて知らん! そんなもん知らん! 帰れ!」
「……お、お前は鬼か?」
「そうじゃ! 文句あるか! お主は何じゃ!」
「お、俺は人間だ、人だ!」

 キリが怒鳴るので、宗一郎も負けじと大きな声を出す。
 キリは内心宗一郎が怖くて堪らなく、足をぶるぶると震わせていた。

「人間なんて知らん! お主は悪いやつか!」
「俺は悪いことなんかしてないぞ!」
「じゃあ良いやつなんか!」
「う…そ、そうだ! 良いやつだ!」

 宗一郎の言葉にキリはホッとする。悪いやつだったら殺されてしまうと思ったからだ。
 良いやつならばその心配はないし、安全だ。

「……なんじゃ寒いのか?」
「…そうだ」

 キリは宗一郎の唇が青くなっているのを見てそう尋ねる。

「お主は良いやつなんじゃな?」
「あぁ」
「……小屋に入れてやるき、ついてこい」

 宗一郎は一瞬迷ったが、体調が悪くなっているのを感じていたので大人しく着いて行った。



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