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 ガラ、と引き戸の音を立てた竜太郎が教室に入ると「やあ」と言いながら眼鏡のクラス委員長が近づいてきた。

「林君、おはよう」
「ああ、柿谷おはよう」
「あのさ、昨日借りた本なんだけどね…」

 柿谷──竜太郎と七生のいるクラスの委員長を務める成績優秀な男だ。そして、眼鏡がよく似合う奥二重の切れ長な目には竜太郎のみが写されていた。
 仲良く会話しはじめる二人に、竜太郎の後ろにいた七生は面白くない。七生は竜太郎の背中におぶさるように抱きつき、二人の会話に割って入る。

「りゅうちゃん、そんな糞眼鏡とラブラブしちゃいや!」
「……相島君、誰が糞眼鏡だって?」
「あんたよ! って、いやああああぁぁぁん! りゅうちゃんに触らないでよ眼鏡! 汚れちゃううっ」

 竜太郎と柿谷の肩が触れそうになると、七生は柿谷を突飛ばした。尻餅をついた柿谷を助け起こそうとする竜太郎を止めて、「ちゃんと消毒しないとばっちぃばっちぃ!」と竜太郎の肩を払っている。

「はっはっは……相島君、乱暴だなあ」
「当たり前でしょ! りゅうちゃんをイヤらしい目で見ないで!」
「なんのことかなあ? てかむしろイヤらしい目で林君を見ているのは君の方なんじゃない?」
「んまあ! 私のは愛が籠ったラブラブ光線よ! あんたと一緒にしないで!」
「あはは、一方通行のラブラブ光線ね」

 自力で起き上がった柿谷が七生と口論を交わす。竜太郎は二人を呆れた顔で見ていたが、だんだん七生がヒートアップしていくと、二人の間にはいり喧嘩を止めた。と、いってもフウフウ言って怒っているのは七生だけで柿谷は涼しげな顔をしていた。

「七生、落ち着けよ」
「だ、だってりゅうちゃん! このゴミクズ眼鏡が…」
「七生、いいからやめろよ。柿谷、ごめんな」
「林君は気にしないでいいよ」
「キィーッ! ムカつくゥゥ!」
「七生、やめろ」
「……はあい」

 しぶしぶ、という感じで七生は引き下がった。



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