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俺はゆうちゃんに対してストライキすることにした。
「真太郎、なにそれ」
「『ゆうちゃんお断り!(謝罪は可)』たすき。俺ストライキしてるの」
「ふーん……。でもそれ意味あんの。お前がいなくてもあいつなんも困らないだろ」
「…中田の阿呆! 困るに決まってるだろ! ゆうちゃんの好きなものわかってるのは俺だけなんだから!」
「へぇ〜。あ、じゃあお前今日から昼買い物行かなくていいんだな。昼飯一緒に食おうぜ」
「うん、でもゆうちゃんが謝ったら買い物行くからね」
ゆうちゃんが俺という存在の大切さを理解し、反省して謝ったら俺は心良くゆうちゃんを許し、そして二人は結ばれるのだ。
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ゆうちゃんは謝らなかった。
何度もたすきをピン、と張って良く見えるようにして、ゆうちゃんの前を通ったのにゆうちゃんは一度ちらりと見ただけで、全く動じなかった。
ゆうちゃんの隣にいる昨日の派手な女のクスクスと笑う声が俺を惨めにした。
俺…ゆうちゃんに取ってどうでもいい存在なのかな…。少しは俺のこと気にしてくれていると思っていたのに…。
「中田……俺脈なしかな…」
「まあそう落ち込むな」
「だってゆうちゃんが…」
「うんうん。酷いやつだな」
「あんな、あんな女より俺のほうがゆうちゃんのことわかってるし、好きなのに…」
俺はいつだってゆうちゃんのために行動してるんだ。あんな女ゆうちゃんに相応しくない。
「ゆうちゃんの事は諦めてさ、他に恋すれば?」
「はぁ? ゆうちゃんに勝るやつなんていないだろ…」
「いるじゃん。俺」
なにいってんだこいつ、と思ったけど良く見れば中田はなかなかの美形だった。知らなかった。
「ね、どうよ?」
「…悪くないな」
でもゆうちゃんを愛しちゃってんだよね俺。なかなか諦められないよ、脈なしでも。
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