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──恋する力は偉大なり!
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「ゆーちゃあーーん!」
ギューン! という音を立てて俺は、猛スピードでゆうちゃんに抱きつく。ゆうちゃんは嫌そうな顔して背中に張り付く俺を、べりっと剥がした。
「うぜえ」
「あれぇ照れてるぅ? もーう本当可愛いな俺のお嫁さんは!」
「やめろ」
頬をつんつんとつつく俺にゆうちゃんは心底軽蔑した顔をするけど、俺は全く気にしないもんね。
「ゆうちゃんは可愛いね!」
「……うるせぇ」
俺はゆうちゃんに恋をしていた。
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「真太郎、見たぞー。朝からアタック激しいなー」
「まあね!」
「まあ、頑張れよ。多分無理だけどな」
「何ぃ!? 今にゆうちゃんは俺にメロメロになるから!」
友達の中田にからかわれるけど、脈ありだと思うんだよね。だって家に押し掛けた時最初は断られたけど、二時間外で粘ったら家の中に入れてくれたし。しかも温かいココア付き! 天使みたいに優しいゆうちゃん。
「てかあいつのどこが好きなの?」
「可愛いところ」
「どこが可愛いんだよ。あいつ身長185ぐらいあるし嫌みなくらいの男前だろ」
「可愛いだろ全部」
「……ヤバいよお前」
むっ。中田にはゆうちゃんの素晴らしさが分からないようだ。まあ、ゆうちゃんに惚れられても困るからいいけどさ。
「てかお前あいつに嫌われてるじゃん」
「嫌われてない」
「財布代わりにされてんじゃん真太郎」
「そういうのは全部愛なんだよ、愛! ゆうちゃんに愛されてんのさ俺」
そりゃあ毎日食堂には売ってないトロトロクリームパンをコンビニまで買いに行かされるけど、ゆうちゃんはちゃんとありがとうって言ってくれるし、なんだかんだいって好かれてると思うんだよね俺。
「おい」
「な、なにゆうちゃん!」
「飲みもん買っといて」
「うん分かった!」
どっからどう見てもパシりだろ、という中田は無視した。
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