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 そんなカナメを見ていたら何か言わないといけない気がするのに、何を言えばいいか分からなくて悶々としているとカナメが重々しく口を開いた。

「陽太郎……僕も君の事が好きだ。でも……」

 それだけ言ってカナメは口を閉ざしてしまう。そしてちらちらと俺を見る。
 でも、なに? 好きならそれでいいじゃないか。

「……カナメ?」

 またさわさわと風が吹いた。カナメは何も言ってくれない。俺はどんどん不安になる。どうして黙ってるの?

「――あー、やっとかよ」

 すると知らない男の声がした。
 声のする後ろを向くと男が立っていた。

「これで終わりか、ヨウ」
「やめて、僕はカナメだ」

 男はすたすたと歩いて、カナメに話しかける。ヨウ、と。

「か、カナメ?」
「おい、坊主。可哀相になぁ、お前こいつに騙されてるんだよ」
「やめてよ! シンゼン!」
「なんだ、ヨウ。分かってたことだろうに。愛着が沸いたか?」

 2人の話しが分からない。俺はカナメを見る。
 
「ヨ、ヨウって誰? カナメのこと?」
「ち、違う!」

 頭がごちゃごちゃして二人の会話についていけない。なんなんだよこの男。
 俺が騙されてるって?  意味が分からない。
 ただひとつだけ、カナメが酷く慌てているのが分かった。

「全く、『カナメ』だあ? 嘘をつくのが本当上手いな、お前は」
「やめて、やめて。陽太郎の前で話さないで」
「今話さなくても後で知るんだぜ。なら今、お前がいる時に話したほうがいいだろ?」

 シンゼン、という男はニヤつきながらカナメに話しかける。
 聞きたいことは沢山あるけれどなぜか口が重く閉じてしまい、話せない。



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