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 ――今日俺はカナメに自分の気持ちを伝えようと思っている。カナメと初めて会ったのは夏が始まった頃。俺はすぐカナメに恋に落ちたし、自惚れているけれど、カナメも俺のことが好きな気がするんだ。だから、気持ちを伝えてカナメと付き合いたい。

「カ、カナメ!」
「ん、なあに?」

 俺の呼びかけに振り返るカナメ。さらりと髪の毛が揺れる。カナメは微笑んで俺を見る。
 やっぱりカナメは綺麗だ。

「あの、俺カナメに言いたいことがあるんだ」

 カナメの目を真っすぐ見て、そういうとなぜだかカナメの笑顔が消えてしまった。

「陽太郎、言わないで」
「え?」
「君が言おうとしている事が分かるから」

 カナメは強ばった顔をしてそう言う。
 なぜ言ってはいけないのか。俺には分からない。俺に告白されたくないってこと?
 カナメに苛立ちを感じて声が荒くなる。

「なんで言っちゃダメなの!」
「それは……」

 カナメは言葉を濁し、目線を俺の後ろに向ける。その視線につられて俺も後ろを見るけど、木が一本立っているだけだった。不格好な曲がった木。
 そんなのはどうでもいい。
 俺は例えカナメと夢の中でしか会えなくても好きだから自分の気持ちを伝えたいのだ。

「俺、俺、カナメのことが」
「陽太郎! 言っちゃダメ!」
「…好きだ」

 カナメの静止を遮って俺は言う。
 さわさわと風が吹いた。
 俺は言い切った事に言いようのない達成感を感じた。カナメも俺のこと好きだと感じているという自負があったからだろう。
 だけどカナメはちっとも嬉しそうじゃなかった。カナメも喜んでくれると思っていたのに、悲しげに眉を八の字にしていた。



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