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サデスSide

 第一戦が終わり、皆が帰還してくる中僕は不安に包まれていた。
 イシュアが帰って来ない。
 帰っていたらきっと真っ先に僕の所に来るはずなのに。
 なぜ、なぜだ。なぜ帰って来ない。
 嫌な考えが頭をよぎる。

「サデスという名の者はおるか」

 広間に怪我をした男がやってきてそう尋ねる。サデスという名前の持ち主は僕が知る限りは僕しかいない。
 僕は立ち上がって彼の元へ向かう。

「僕のことでしょうか」
「わからんがサデスという名前の奴が君しかいなければそうだろう」

 彼はそういうと、ポケットから一つのペンダントを出した。

「ある少年にこれを預かった。君に渡せと言われた」
「…これを?」

 見たことのないペンダントだった。
 僕は少し不思議に思いがらもそれを受け取る。

「………あ」

 ペンダントの裏を見ると文字が彫られていた。“ハッピーバースデー 君の永遠の友 イシュアからサデスへ”
 僕の誕生日は五日後だ。きっとプレゼントとしてイシュアが用意してくれたものだろう。

「こ、このペンダントの持ち主は…」
「……亡くなった。残念だ」

 それだけ言って彼はでていった。彼も最前線にいたのだろうか、片足がなくなっていた。それでもきっと幸運なほうなのだろう。生きて帰ってこられた者は少ない。

「イシュア…」

 君は死んでしまったのか。僕を残して。
 もう君の明るい笑顔も、馬鹿げた冗談も、何も見ることも聞くこともできないのか。

 だから、嫌だったんだ。本当は兵士になんかなってほしくなかった。無理して僕について来なくたってよかったんだ。
 長官にだって逆らってほしくなかった。そんなことしたらどうなるかなんて目に見えていた。
 なのに、なのにイシュアはいつも「サデスは俺が守るの!」って変に頑固で僕の言うことなんか聞いてくれなかった。
 僕より年下のくせに、剣術だって下手なくせに、本当は僕より戦場が怖くてたまらなかったくせに、いつもいつもイシュアは、僕を守ろうとしていた。
 だけど、もういない。

 涙が僕の頬を流れ落ちた。

サデスSide終わり



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