1

 夏…!
 なんて素敵な季節! 夏は僕を魅了する。
 輝く緑、サンサンと照らす太陽。そしてなんといっても青い海!
 太陽の光が反射しキラキラと輝く海。夏の海が一番美しい。
 そして…夏の海を見ると僕はいつも彼を思い出す。
 ネイサン・リュークス。高校の時の同級生だ。
 彼の瞳はとても綺麗なブルーで、夏の海の色と良く似ていた。
 僕はひそかに彼に思いを寄せていたけどついに伝えられなかった。彼はひどくモテたし僕はいじめられっ子で彼とはとても違うからためらってしまったのだ。
 彼と話したのは一度きり…
 あれは高校二年の時だ。



*******


「ハイ、リオ! 君、絵が上手いんだね」
「あ、あ、ネイサン。う、うん。絵を描くの好きなんだ。僕」

 いきなり話しかけられてとても動揺したのを覚えてる。
 彼が僕の事を名前で呼んだから僕もつい彼を名前で読んでしまったっけ。

「へぇ、海だね。とても綺麗な色してる」
「そうなんだ、夏の、海はとっても綺麗だから、描きたくなって…」
「あぁ、分かるよその気持ち。俺は夏の海を見るとたまらなく泳ぎたくなるんだ。だってキラキラ光って綺麗だろう? 夏の海で泳ぐのはたまらなく快感だよ」

 僕は海の話しをする彼のブルーの瞳もキラキラと輝いている気がした。
 そんな彼を見た僕はつい口が滑ってしまった。

「き、君の瞳の色もとっても綺麗だ! 夏の海と同じ色だよ!」

 言った瞬間しまったって思った。だってゲイまるだしだから。でも彼は一瞬ポカンと口を開けた後ニィッと笑ってくれた。

「ありがとうリオ、最高に嬉しいよ! 俺も君の瞳の色、好きだぜ。秋の葉っぱの色だ」

 赤みがかった茶色の瞳は僕にとってコンプレックスだったけれど、彼のその一言でそれはどこかへ飛んでいってしまった。
 彼はそう言ったらさっさとどこかへ行ってしまったけど、僕の胸はいつまでも高鳴っていた。


********


 彼と話したのはその一度きりだ。
 でも僕はこうして夏の海を見る度に、彼の事を思い出してあの日のときめきをまた感じている。

 そうしてしばらく海にいると日も暮れてきて、人も少なくなってきた。
 肌寒くなってきたので、僕は腰を上げ帰りの準備をする。
 すると、海から上がってきた男が僕を呼び止めた。

「リオ! あぁやっぱりリオだ、俺のこと覚えてる? 久しぶりだな!」

 振り返ると夏の海の色の瞳をした男が嬉しそうに僕を見ていた。
 トクン、とあの日のように胸が高鳴るのを感じた。


終わり



[*prev] [next#]
[back]
[しおりを挟む]



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -