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 その日はきぃちゃんの誕生日だった。会えないからといって僕が祝うのをやめるわけははなく、毎年その日は近所の小さなケーキ屋さんできぃちゃんのチョコレートシフォンケーキを用意していた。
 一緒にいたときはいつも通っていたケーキ屋さんがあってきぃちゃんはそこのチョコレートシフォンケーキが大好きだった。でももうそこにはいけないし僕は違うお店で用意する事しかできなかった。
 1人できぃちゃんの誕生日をお祝いし始めて五年が経っていた。

「きぃちゃん、22歳の誕生日おめでとう」

 僕はきぃちゃんの写真に向かって呟いてケーキの火を自分で消した。22歳のきぃちゃんはどんな感じだろうか。彼女とかいてきっと昔よりずっとかっこよくて、でもやっぱり可愛くて天使に違いない。
 毎年僕があげる誕生日プレゼントをぶっきらぼうに受け取って、でも嬉しそうに開封しているきぃちゃんを思い出して僕は目が熱くなった。本当は誕生日プレゼントだってあげたいし会いたくて会いたくてたまらない。
 でももう僕にきぃちゃんの誕生日を祝う資格なんてない。僕はきぃちゃんにとって大好きなお父さんとセックスをしてた気持ち悪いお兄ちゃん、嫌ゴミ同然なのだ。それくらいきぃちゃんはお義父さんを慕っていた。僕はきぃちゃんの大切なものを壊してしまった。

「ごめんね、、、きぃちゃんごめんね…」

 きぃちゃんの誕生日は毎年泣いてしまう。会えないことの辛さが僕を苦しめた。






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 翌日の気分は最悪だった。僕は泣きすぎて頭が痛いしさっさと仕事を追えて寝たかった。その集中力のなさが仕事にも影響してしまった。ミスは連発するし、はっきりいって役立たずだ。体調が悪いといって早退しようかと僕は事務所に向かった。
 途中光が目に指して眩んだ。思わず目をつむってフラフラしてしまった。どすんと何かにぶつかった。思わず目をあけると棚にぶつかってしまっていた。痛いなぁと肩をさする。

「おいバカ!!気をつけろ!!」

 しかし誰かが叫んで気がついたら棚が僕に向かって倒れてきていた。逃げられない。僕は運動神経が皆無なのだ。きぃちゃんはとって足が早くていつもかけっこで一番だったけれど。僕に似ないで素晴らしい子なのだ。
 逃げようとしたが不安定な棚は思いのほか倒れるのが早くて僕の右足の上に落ちてきた。ついでに顔も床にぶつけたしとても痛くてたまらない。所長が救急外来に連れて行ってくれたが、僕の足は見事に折れていた。顔はちょっと腫れていた。
 そんな状態では働けず僕は治るまでの2ヶ月間の間休むことになった。仕事中の怪我だから医療費が下りるのが幸いだった。きぃちゃん貯金がこの間はできないのが辛い。


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