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三咲はさらに追い打ちをかける。
「先輩のこと好きだと思ってたから告白も受けたし、ずっと付き合ってきたけど、先輩とはなぜかキスできなかった。でも、あの日キスされていつもみたいに喧嘩別れした次の日、他の人試しにとキスしたらなんであんなに嫌がっていたのかわからないほどすんなり受け入れられたんだ。だから先輩のことは好きだけどきっと特別じゃないんだ」
「な、なんでそうなるんだよ・・・」
三咲の告白に翔一は声を震わせながら尋ねる。
「だって先輩、好きな人とならキスしたいって思うはずだって言ってたじゃないか」
俺はそう思えなかった。三咲はぽつりと呟く。
翔一は死にそうになるほどに打ちのめされる。
この三ヶ月、喧嘩ばかりだったけど三咲は自分のことを好きだから一緒に居てくれると思っていた。でもそれすらも勘違いだったなんて。翔一は力を込めていた握り拳をだらんと解いた。
「傷つけてごめん。別にキスしたあの先輩が好きってわけでもない。俺、たぶん誰も好きじゃないんだ」
三咲は申し訳なさそうに眉を八の字にする。
翔一はついに涙が止まらなくなってきた。しゃくりをあげそうになるのを必死にこらえる。
「・・・帰れ」
喉から絞り出すような声で翔一は言った。
三咲は黙って立ち上がるとちらりと翔一を見たが、静かに翔一の部屋から出て行った。
二階にある翔一の部屋から三咲が階段を降りて行き、玄関をガチャンと閉める音がすると翔一はワッと声を上げて泣き始めた。
何度も三咲はもしかして自分のことを好きではないんじゃないかと疑ったことはあった。でもそれが本当だと思いはしなかった。
翔一は死にたくてたまらなかった。
******
一晩中泣き続けてもご飯を食べてもぐっすり眠っても気分は落ち込んだままだった。
でも、翔一は朝起きて顔を洗って学校に行った。
そして翔一はようやく自分が振られたということに気づいたのだ。初恋は実らなかった。
登校途中、三咲によく似た子を見つけて苦しくなる。翔一は視線をそらしてそっちを見ないようにして歩いて行く。もう二度と三咲のことを考えたくなかった。
三咲なんて知らない。俺はもう三咲なんて知らない。
翔一は自分にそう言い聞かせていた。
三咲なんて嫌いだ。
END
とりあえずこれでおしまいです。
高校生になった二人をそのうちまた書こうと思います。
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