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 翔一は後ろから聞こえる2人の争う声にイライラとしながら教室へ戻る。
 三咲の馬鹿、と毒づいてみるがキスをする2人の光景が頭から離れなくなり胸が苦しくなるだけだった。
 翔一は席に着くと机にうつ伏せる。まだ一時限目も始まってすらないのに、早く家に帰りたくて仕方なかった。


******


 ひたすら胸が痛いせいで翔一は全く授業に集中できずにいた。
 得意な数学ですら上の空になってしまう。
 翔一は黒板をただ見つめながら三咲のことを考えていた。朝、三咲は自分に何を話そうとしていたのだろう。三咲の事が気になって仕方がないのに、三咲を思い浮かべると隣にサッカー部の気に入らない男もついてくる。
 名前すら知らないし知りたくもないサッカー部の野郎のせいでこんなにも悩まされている自分が翔一は嫌だった。

「木下! 五番」

 呼ばれてハッと気付くと、問題を指名れていた。慌てて黒板へ答えを書きに行く。
 あまりの呆けように翔一は自分にあきれた。


******


 放課後、帰ろうとしていた翔一は下駄箱で待ち伏せしていた三咲と会った。
 翔一はそのまま通りすぎようとしたが、三咲に服の袖を掴まれた。

「先輩、待ってよ…」

 翔一は足を止める。

「俺、先輩とちゃんと話したいんだよ」
「………うん」

 三咲は真剣な目で翔一を見上げてきた。翔一は思わず頷いてしまった。



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