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 いつの間に姿を消したの。忍者なの。ニーンニン。
 俺の目から流れ出ていた涙クンも「えっ!? 羽山さんマジッスカ! このタイミングでいなくなるんすか!?」と驚いて目から引っ込んでしまった。

「あ、ごめんトイレ行ってた」

 と思ってたら羽山さん現れた。あ、そうですか。トイレですか。よく行けるねこの雰囲気で。サスガダヨネ、キミ。

「……そんでさっきの話しだけど」
「は、はい!」
「俺も散々鎌田を傷つけたし、なんか言える立場じゃないと思う」
「はい」
「だから、えっと、その、いいよ、別に……寝たわけじゃないんだし」

 あ、でも今日持ってきたケーキは抜きかな、なんて羽山さん笑っておっしゃった。

「…ソウデスカ」

 なんか羽山さんの反応思ってたのと違う。
 こんなあっさり?
 ダーリン、それで終わりかい?

「鎌田? そんながっかりした顔するなよ。嘘だよ、ケーキ食べていいよ」
「あっはい…」

 拍子抜け…拍子抜け…羽山さんに拍子抜け。
 俺、羽山さんに渡された美味しいケーキ食べながら拍子抜け。
 羽山さんが初めてキスマークつけてきた時、俺泣きながら文句言ったのに羽山さんあっさり。もっとコッテリでいいのに…さっぱりしすぎじゃないかねワトソン君。
 俺、美味しいチーズケーキ食べながら羽山さんをじぃと見つめる。
 羽山さんはまたテレビつけて、お笑いみながらケーキ食べてる。その姿はいつもと変わりはないように見える。
 うっそーん、羽山さんうっそーん。それで終わっちゃうの?
 悪い子だねって呟いたのはなんなんだったのさベイビー…。
 見つめ続けてると俺のテレパシー通じたのか、羽山さんクルッと振り返った。

「……だけどもうそんなことしないでね」

 そういう羽山さんの顔は真剣で。

「うん…!」

 それ見て、やっぱり俺が間違っていたんだなぁと鎌田君思うわけです。



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