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俺は下を向いて膝をひたすらサスサスしながら喋る。
「俺、友達に羽山さんのこと相談しててそんで友達に、俺も同じことすればいいって言われて、そんでとりあえず浮気してるふりをしようってなって、だからそいつにキスマークつけてもらって、そしたらなんか変な雰囲気なって…そんでチューとかしちゃって…ちょっとちんことか触られたし、でもそこで他の友達が来たから俺帰ってきて……」
早口でそこまで喋ったけど羽山さんからは何もなくて、やっぱり俺は膝をサスサスする。
サスサス、サスサス、サスサス…。
それでも羽山さんは何も言いません。
サスサス、サスサス、サスサス…。
俺やっぱり嫌われたかなぁ。
サスサス、サス、サス……サ、ス。
膝を擦る手が止まっていく。
サス、ポタ、ポタ、サス……。
いつの間にかズボンに染みが点々とできている。
ポタ、ポタ、ポタ…。
俺の涙がズボンに水玉模様を作っていく。
泣くくらいなら最初からやるなよバーカって心の中にいる意地悪な俺が言う。正論だった。
「…鎌田は悪い子だね」
ぽつりと羽山さんが言った。
呟かれたそのお言葉の意味がいまいち俺分からない。
でも羽山さん怒ってるんだと思う。水玉がどんどん歪んでいく。
「は、はやまじゃん、おでと、っわ、わがれるんですがぁぁぁぁあ」
そう言った途端に、ぶぇあぼばぁぁぁと汚い音が俺から溢れ出していく。顔はもはや汁だくでべちょべちょのぐちゃぐちゃだ。
ずずずずと鼻を啜って顔をあげると羽山さんがいない。
え、嘘でしょ帰ったの? え、マジで?
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