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どうしようか、シャワーを浴びてはみたけどもう逃げられない。キスマークを見た羽山さんはなんて言うだろうか。傷つくだろうか。俺が羽山さんの首に俺じゃない誰かがつけたキスマークがついてるのを見たときみたいに。それを期待してつけたわけだけど、現実はきっと怒るだろうな。手で髪をかきあげたあとに大袈裟なため息をついてこう言うんだ。
がっかりだな。
でも俺、羽山さんがナルシー入ってるとこも好き。だってかっこいいんだもん。胸がチュンチュンしちゃうもんね。
だけどだけどあの人割りと自己中だから自分が浮気したことなんか宇宙彼方に放り投げて、俺をねちねち苛めるに違いない。
ちくしょー、羽山さんと付き合って俺心労で三キロ痩せたんだぞ。羽山さんは女泣かせの俺泣かせだ。
……でももし、別れようって言われたら?
考えただけで死にそう。俺やっぱり羽山さんとは別れられない。羽山さん見るだけで、俺目からハートが飛び出ちゃうんだ。
でも……でもね……
「羽山さん、シャワー出ました!」
「おー、じゃあケーキ食べよう」
俺、唾30回ぐらい呑み込んでから浴室出た。
意を決して羽山さんの前に正座。
羽山さんなんで俺正座して俯いてるのか最初分からなかったみたいだけど、俺がそっと自分の鎖骨にあるキスマークを指すと笑うのやめた。
「え、なに? それキスマーク?」
イエス。
「だ、誰かにいたずらされたの?」
ノー。
「じゃあ……」
イエス。
「お、俺、浮気しました!」
すっごい大きな声で言った。
羽山さんは驚いた顔してこっち見ていた。
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