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「そんでさー、チェルったら気絶しちゃってるんだぜー」

 チェルの醜態を思いだしつい笑ってしまう。
 ユコフも面白がるだろうなぁって思って反応を見てみると笑ってない。あれ、ウケると思ったのに。

「そ、それだけじゃなくてね、チェルって前に俺と風呂入った時も、体洗ってあげようとしたら急に暴れだしておかしかったんだよ」

 こんな風にくねくねって、と再現する。今度はバカウケでしょ。

「………」

 あ、あれ。またウケない。
 というか不機嫌そう。
 なんか不味いことを言っただろうか?

「ユ、ユコフ?」

 どうしたの? て聞いたらユコフは何もいってくれなくてちょっと不安になる。
 すると、ユコフの手が俺の頬っぺたにおかれる。

「ムーシャ、あまり妬かせるな」
「え……」
「今日はあまり優しくできないぞ」
「ん……あ、ユコフ…」

 キスをされ目を閉じると、ゆっくりと後ろに押し倒された。


******


「いてて……」

 なんだか昨日のユコフはいつもより激しくて腰が痛い。
 歩くたびに鈍痛が体に走ってちょっとつらい。かといって飛ぶ元気もない。
 それに昨日ユコフに言われたことがちょっと気になっている。

(もうあんまり幼馴染みの男と会うな)

 とりあえず頷いちゃったけど、会うなって言われたって家が隣だし会わずにもいられないっていうか。

「まぁ……いっか…」

 とりあえず家に帰って休もう。
 しばらく歩くと家が見えてくる。もう朝だから皆起きてるかなぁなんて思ってると、ちょうど隣のチェルの家からチェルが出てきた。
 チェル、と声をかけるとチェルが俺に気付いて顔を上げる。

「あ、ムーシャ。おはよう!」
「おはよう、チェル」
「早いね、散歩?」
「う、うん」

 嘘をつくのがなんだか後ろめたくて目を反らすけど、チェルは気づかないようでその笑顔が眩しい。

「あれ、ムーシャ、首になんか赤い跡が…」
「え、あ、あははは、虫に刺されたかなぁ? 薬塗らなきゃ、あはは、じゃあね!」
「え、あ…」

 きっとユコフのキスマークだ。やばい、慌てた俺は急いで家の中に入った。

「今のって…」

 だからチェルが複雑そうな顔をしてたことになんか気付かなかったし

「や、やべぇ…チェル気づいちゃったかなぁ?」

 それにどうして自分がこんなに動揺しているのかが分からなかった。

end



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