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ゆうちゃんと俺はラブラブに戻ったはずだった。
だがゆうちゃんが優しかったのはほんの、数ヶ月、いや数週間……いやいやたったの数日だけだったのだ。
ゆうちゃんはいつものゆうちゃんに戻ってしまった。
「あぁ、寂しい…!」
ひし、と己を抱き締めながら恨みがましくゆうちゃんを見てみるが、ゆうちゃんは雑誌に夢中。そのぐらい熱い目で俺を見てよ……
キィ、と思わずハンカチを噛んでいるとゆうちゃんが雑誌から顔を上げ俺を見る。
あぁ、なんて素敵な眼差し…!
「ゆうちゃん…!」
「真太郎、お茶」
思わず目を瞑り唇をほんの少しだけ尖らせて待ってたのに、それかよ! ちぇっ!
でもまぁ、愛するゆうちゃんのためだもんね!
「は、はあい! いま買ってきまぁす」
「おー」
財布を手に教室を出る。
自動販売機は一階下だ。
ゆうちゃんのためならえんやこら。せっせと下に降りて伊右衛門買った。前に綾鷹買ってきたら「……伊右衛門」と、ぼそりと呟かれたからそれ以来ちゃあんと伊右衛門を買っている。
伊右衛門を持って階段昇って、さぁゆうちゃんお待たせ…と教室の扉を開けたら……あれ?
「あはは、ゆうったら〜!」
お、俺の席に座ってゆうちゃんと喋ってる男がいる…!
む、と思いつつ近づいた。
「ねーねー、それでさぁ、ゆう」
「あのー」
「…雑誌に載ってるアレがさぁ」
「ちょっと、あのー」
こ、こいつ…!
絶対聞こえてるのに! 絶対聞こえてるのに無視しやがる!
ちらっと一瞬だけこっちみたけど何事もなかったかのように無視しやがる!
ムキイイイイ!
「こいつぅぅぅ! そこは俺の席だぞぉぉぉ!」
「うわぁ! いったぁい!」
「ゆうちゃんとイチャイチャしやがってぇぇぇ!」
「な、なにこいつ? 離せよ馬鹿!」
そう言われたら余計離したくなくなるもんね!
俺はやつの耳を引っ張りあげる。
と、男が俺の手をひねりあげるもんだから俺は手を離してしまった。
男は振り返って今度は俺の耳を引っ張ろうとしてきた。
「仕返しだ〜!」
「キィィ! 小癪なぁ!」
俺は耳を守ろうと男の手を押さえようとした。
その瞬間、俺は初めてまともに男の顔を見た。
「ま、眩しい…!」
「は?」
こいつ、美少年だ…!
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